マスタリングってどんな作業なんだろう?
ミックスと何が違うんだ?
早速ですが、結論はこうです↓
目指す方向 | 調整の方向 | 求める色のイメージ | 必要な精神 | |
ミックス | 芸術性 | 神を恐れぬ積極的な調整 | カラフル | 実験性 |
マスタリング | 普遍性 | 神を細部に宿らす微調整 | クリア | 確実性 |
ということで、順を追ってご説明していきます。
この記事の目次
マスタリングは素人にもできるのか?
いきなりですが、マスタリングは僕ら普通のDTMerにもできるものなんでしょうか?
答えはYES。
誤解を恐れずに言えば、最早アマチュアでもプロ並みのマスタリングが可能になっています。
それはテクノロジーの発展のおかげ!
iZotope ( アイゾトープ ) / Ozone 9 Advanced サウンドハウス
AI(人工知能)のパワーがとにかくすごい。
相当(本当に相当)なこだわりがなければ、AIの力だけで十分。
プロユースにだって耐えうる時代です。
なんて言ったら本職の方々に怒られちゃいそうですが(;´༎ຶД༎ຶ`)。
ブラインドテストなんかしたら、僕だったらどっちでも良くなってしまいそう。
という訳で、まずはマスタリングってどんな作業なのか?
ミックスとどう違うのか?というところから行ってみましょう( ꆤωꆤ )y─┛
マスタリングは本来、曲間を整えるものだった
マスタリングといえば音圧をびっちりあげるイメージですよね?
音源の音量を大きく爆音にする。「調味料をメガ盛り」する感じ。
しかし、本来は違いました。
大昔、まだアナログテープに音楽を録音していた時代。
- 曲と曲の空白部分の調整
- 曲ごとの音量のばらつきを揃える
これらの作業を「マスタリング」と呼んでおりました。
作品を頭から通して聴いた時に違和感がないようにする作業。
音圧ドッカン山盛りだぜー!味付けすっぞー!ってことよりも、
10曲入りのアルバムだったら、アルバムの世界観を極力壊さないように整える。
マスターテープ(レコードになる前の最終テープ)へ音楽を規格内にピシッと納める作業がマスタリングの本来の仕事。
逆にアーティスティックに音楽を彩る作業がミックスでした。
昔はそれぞれの役割がちゃんと分かれていたんですね。
その違いを象徴するように、
ミックスエンジニアとマスタリングエンジニアでは、好むコンソールデスク(ミックス卓)も違います。
アウトボード機材の選定もはっきりと分かれています。これは今でもそう。
ミックスエンジニアに人気なNeveやSSL
コンソールデスクの王様と言えば英製のNeve(ニーブ)やSSLですが、
これらは主にミックスで使われてきたメーカーです。
-Neve Console-
-SSL 4000 Console-
他にもAPIやQuad Eightと言った米国製のデスクも人気がありました。
Quad Eightは遠い昔にメーカーが潰れてしまったので、解体されて中古のモジュールが出回っている程度です。
-Quad Eightのモジュール-
これらのコンソールも今ではプラグイン化されてますよね。
何千万とするコンソールを手の届く価格でPC上に再現できる、、、。
DTMの楽しさはこんなところにも(;´༎ຶ益༎ຶ`)♡
中でもUADやSoftubeの再現度は垂涎ものの出来!
僕はブラインドテストしたら、違いがわかる自信がありません。
マスタリングエンンジアに支持されていたNeumannやNTP
NeveやSSLに比べたら知名度が下がりマイナーですが。
高級マイクで有名なあのノイマンもコンソールデスクやカッティングデスクをかつて製造していました。
日本にも数台入ってきていて、主にマスタリングで使われていたようです。
-Neumann Console-
世界的なマスタリングエンジニアにBob Ludwig(ボブ ラディック)が、
かつて愛用していたのも、ノイマンのカッティングコンソールにカスタムで搭載されていたNTP179-120と言うデンマーク製のコンプレッサーだったと言われています。
-NTP179-120-
近年のボブさんと言えば、2014年にグラミー賞を獲得したダフトパンクの「RANDOM ACCESS MEMORIES」のマスタリングエンジニアを務め、見事最優秀アルバムエンジニア賞を受賞されています。
-Bob Ludwig-
このアルバムもダフトパンクがこの時代にアナログレコーディングで臨んだ鋭い作品だったので、マスタリング的な視点から音源を聴いてみるとまた新しい発見があるかもしれません!(((༼•̫͡•༽)))
とにかく素晴らしい出来ですね、、、。
NTPのコンプレッサーは一体どんなマジカルな音がするのだろう、、、?と個人的にとても興味を持ってしまい、一時期必死に実物を探していました。
しかし見つかるものはどれも高額、、、、。
とてもじゃないけど、手が届かない!
と言うことで、ボブ氏が愛用していた179-120の後継機種、179-160と言うコンプレッサーをどうにかこうにか入手してDIYで配線!
-NTP179-160-
一時期音質の研究をかなりやったものでした。
初期の物とどれだけ音質が違うのかは?ですが。
とても素直でナチュラルなコンプ感に、まさしくマスタリングに最適なアイテムだと腑に落ちた思い出。
音の繋ぎが滑らかですよね、昔のハード機材の音は特に。
ミックスとマスタリングでは求められる音色(カラー)が違う
コンソールデスクの話を唐突に出してしまいましたが、
使われる機材を見てみると、ミックスとマスタリングへの理解が進みます。
ミックスで求められる音の方向性(カラー)
ミックスで好まれる機材(NeveやSSL)は、一聴して音に変化が現れるのがわかりやすい機材たちです。
通すだけでも音が変わります。
積極的な色付けに向いている機材ですね。
そしてそれは、ミックスと言う作業に求められるもの。
ミックスは数あるトラックを整理して綺麗に曲をまとめていく作業。
最低限の着地ポイントはそこ。
しかし、プロのエンジニアさんほどただ単に音を「まとめる」だけじゃなく。
積極的にガツガツなサウンドメイキングをしていきます。
NeveやSSLは独特の音色を持っています。
その質感をあえて音に加えていくのもミックスの作業。
そして音をまとめるためには、破壊も必要です。
鬼のようにEQで帯域を切っていきますし。
逆にバシバシブーストをかましていきます。
見ていてほんとひくくらい。
むしろミックスまでを見越して、録り音の時点からEQもグリグリ回していきます。
このEQもメーカーごとにカラーが違ってくるので、それを選別するのもエンジニアの仕事。
そう。
ミックスで重要なのは、
- 曲の感性を最大限まで引き出す実験性
- 思い切りの良さ
- それらを破綻させないで作品としてまとめる
こういうところ。
はっきり言って、すんげーむずいですね、、、。
だってある意味矛盾しているもの。
壊すのに破綻させないって。
マスタリングに求められる音の方向性(カラー)
さてマスタリングはどうでしょう?
マスタリングではミックスで出来上がった音を極力壊してはいけません!
壊さずに良くなる部分があれば伸ばし、ほんのちょっとだけ微調整。
そして前述のように曲間を作り、音量差があれば上げ下げをするのが第一の仕事。
ボブさんが愛用しているコンプレッサーも、派手にバッキバッキにするような代物ではなく。
非常にナチュラルで音楽的な「コンプかかってるの?」と言うくらいの柔らかなものです。
そのコンプの役割も音量差を揃えるためのもの。
マスタリングとはそう言うものです。
本来ならば。
音圧戦争勃発前夜
時代は変わりました。
デジタル技術が発達したことによってPro Toolsが登場。
AVID ( アビッド ) / Pro Tools 永続ライセンス版 (Activation Card and iLok) サウンドハウス
PC上での録音がプロの世界でも一般的になってきたころ(このころはまだDTMは高級趣味でした)とんでもないプラグインが開発されることとなりました。
皆さんもご存知かと思いますが、マキシマイザーです。
当時の代表格はWaves L1でしょう。
Wavesと言えば、今ではDTMerならほぼ持っている標準的なプラグインメーカー。
しかしPC録音が始まった当初はめっちゃ高級品でした。
アマチュアがまず手を出せるような代物じゃなかった。
このL1、今では「しょぼい〜」なんて思うでしょうが、当時はこんなに簡単に音圧が出ること自体が驚異的。
現にまだPro Toolsが普及していなかった90年代後半、
日本J-POPの黄金期の音源は、どれもこれも音が小さいです。
すんげー小さい。
洋楽も、ビートルズのCDとかスッカスカな音です。
レコードは音圧があってかっこいいんですけどね、、、。
CDはスッカスカ。
まだL1が入り込んでない時代はこれが普通だったんですね。
音が大きい方がかっこいい?
L1登場からちょっとして、音圧ぐいあげの先発隊が出始めた頃。
「マスタリングエンジニアさん、もう一声!」
「もうちょい音圧いけませんか?!」
「ちょっとこれだと〇〇の音源に比べてパンチが足りないかなって」
とプロの世界では、競い合うように音源の音圧がどんどんどんどん大きくなっていきました。
理由はご存知「おっきい方がかっこよく聴こえる!」と言う単純なもの。
確かに!
音圧が高い音源の方がインパクトが強いですし、目立ちます。
音圧が低いものはしょぼく聴こえてしまうのも事実。
あと、当時はまだYOUTUBEも普及していません。
音楽のプロモーションといえばラジオやテレビがまだまだ強い時代でした。
音楽レーベルもなるべく自社のアーティストの曲を目立たせたいと、
音圧を高くした音源をラジオにぶっこんでいきます。
これは現代だと、YOUTUBEにも当てはまります。
あんまり音圧が高いと、逆にリミッターかかっちゃうので注意が必要ですよ!
加速する音圧戦争
そんな「音が割れても関係ねぇー!」
とにかく「音圧が高くないと周りに舐められる!」という状況の中、
さらにリリースされ続けていく、Waves L2、L3、、、、、。
音圧の上がり方がより強力に!
パンチのある方向に進んでいきます。
もう歯止めが効かない音楽世界のマスタリング事情。
これが俗にいう、音圧戦争です。
本来的には、出来上がったミックスにはあまり手を加えないマスタリング。
しかしより積極的なサウンド変化を求められるようになっていきました。
おそらくエンジニアたちにとっては本意ではなかったと思います。
- 完璧に味付けをして盛り付けたパスタ(ミックス)
- マヨネーズをかけてかき回す(音圧マスタリング)
- ハイカロリーだぜ〜!うまい!(消費者)
に近い。
でもしょうがない!
クライアントの意向や、時代がただそう流れて行ったとしか言えないですから。
かく言う僕も、当時の音圧感に痺れて酔っていたリスナーの一人です(;´༎ຶД༎ຶ`)
そして現在、音圧戦争は、、終了した?
さて、ここから僕らDTMerが住まう時代。
音圧戦争が限界を迎え、ちょっと落ち着いた?と言われる音楽世界。
音圧戦争は終わった。
と、所々で囁かれ数年経ちますが、本当にそうでしょうか?
まだまだ虎視眈々と、音圧を上げる方法を探してませんか?
理想は音源が破綻しない上で音圧がある音源を作ること。
絶対みんなそう思っているはず。
簡単に音圧あげたいですよね、、、。
ボブさんはじめ多くの音楽関係者が警鐘を鳴らしていた音圧戦争の弊害について。
- 音圧を上げることでダイナミクスが失われる
- ダイナミクスは音の大小の幅
- ダイナミクスが失われるとのっぺりした表現しかできなくなる
- クレッションドやデクレッシェンドのないクラシックに芸術性はあるか?
- ビートルズがパツパツの音源だったら?
- 絶対にここまで世界中を熱狂させることはなかっただろう
まとめると、このような話です。
音楽性にもよりますが、確かにビートルズの芸術性はダイナミクスにもあります。
あの音楽が平坦になってしまっていたら。
人類は大きな財産を失っていたかもしれません。

僕らの武器は更に進化を続けるプラグインソフト!
とは言え!
やっぱり音圧は現代音楽にとって最重要項目の一つとしては外せない!
しょぼい音源はいやざんす。
戦争は終結しても、格闘は続きます。
ダイナミクスはビートルズに任せましょう。
2020年、Ozone9で音圧をあげよう!
L1の登場から早数十年!
様々なマキシマイザーが各メーカーからリリースされました。
その度にDTMerのマスタリングレベルを押し上げてくれています。
僕もSlate Digital FG-XやL3で随分頑張りました。
プロの音に近づけるにはどうしたらいいのか?
悩み続けて数年。
SLATE DIGITAL ( スレートデジタル ) / FG-X サウンドハウス
そしてとうとうきたんじゃない??
限界を超えられるんじゃないか??
とそんなプラグインがiZotopeから発売されました、、、。
そう、Ozone9です!
iZotope ( アイゾトープ ) / Ozone 9 Advanced サウンドハウス

OzoneのAI君はとても人間離れしている
OzoneにはAIが搭載されています。
AIがミックスの改善案まで提案してくれるという。
夢のような話!
その案が気に入ればちょろっと手直ししてマスタリング終わり!
と。
信じられますか?
実際は、本気の時は何度も微調整を繰り返していきますが、
それでも今までに比べたら10分の1の時間で完了できてます。
もうですね、自分で0からマスタリングする気が失せました(笑)
そして今、ミックスとマスタリングに境界線はありません
Ozoen9の登場によりミックスとマスタリングの境界線がほぼ消えました。
既に、かなり以前から両者を特に分けないクリエーターもいましたね。
曲を制作しながら同時進行でミックス。
マスタリング(音圧調整)も初めからやってしまう。
例えば中田ヤスタカさんはそのタイプとして有名ですよね。
完全PCベースでリリース音源を完パケしてしまう。
天才的。憧れ。
考え方としては、
- 最後にどうせ音圧を上げなきゃいかん
- 初めから2MIXにマキシマイザー挿してしまおう
- これでミックスすれば一石二鳥
- 自分の世界観を第三者に壊されることもない
と言うことですね。
とても合理的!
そしてこれを遂行できるのが、まさに僕らDTMerの強みでもあります。
なぜ一般のプロはそうしないのか?
2021年現在でもプロの現場ではミックスとマスタリングをわざわざ分けています。
なぜなのか?ですが。
そもそもミキシングとマスタリングでは、考え方も技術も視点も全く違います。
プロのレコーディングエンジニアほど、
「どうやったらあんな風に仕上げられるのかわからない」とマスタリングエンジニアに向けて言うほど。
僕はそんな会話を何度も聞きました。
そしてなぜかマスタリングエンジニアの方が立場が上な風潮があるんです(笑)
レコーディングエンジニアはダメ出しされる立場になることが多い。
そんな構図があります。キャリアにもよりますけども。
こんなこともあって、両者のポジションは明確に分かれています。
とはいえ、リリースに関するバジェットが少なくなってきている昨今。
ミキサーがマスタリングまでやるケースも増えてますね。
僕らは分ける必要なし
ですから僕らは最早両者を分ける必要はないです。
DTMの技術進化具合はやばいぐらい発展してきています。
DTMerはとにかくその恩恵に全力で乗っていくのが正解!
プロのやり方とはまた違った新しい質感。
そしてそれは優劣では語れない地点まで来ているといっても過言ではありません。
マスタリングする機材って高いんです、、、。
MASELEC ( マセレック ) / MEA-2 サウンドハウス
RUPERT NEVE DESIGNS ( ルパート・ニーブ・デザイン ) / Portico II Master Buss Processor サウンドハウス
こういうのを使ってプロは音をまとめていきます。
もっとすごいところだと、特注のオリジナルコンソールを組み上げているスタジオも。
日本でトップレベルのところは設備も桁違い。
確かにソフトだけでは、ハード機材の持つ独特な滑らかさを加えることは難しいです。
お金があれば是非ハード機材も試してみてください!
僕は、買っちゃいました。
やっぱりハードもすごくいいです、、、。

けれど、最後にはマスタリングプラグインを絶対に使います。
音圧を上げるのはプラグインじゃなきゃ無理。
PCのスペックやレイテンシーと相談しながら、制作段階でマキシマイザーをさしちゃいましょう。
しかもOzone9には鬼のように便利な機能が追加されました。
iZotope ( アイゾトープ ) / Ozone 9 Advanced サウンドハウス
今までの苦労は一体なんだったんだ!!!
まとめ
と言う事で、随分とだらだらと書いてしまい申し訳ありませんでした。
と言う事で、マスタリングって何なの?
の答えは、
2周回って、音圧を上げる事。
で間違いないと思います。
そして、僕らDTMerはミックスとマスタリングを分ける必要はなし!
ただ「本来は違う作業だった」と何となく覚えておいてくださいね。
そうしないと、
こいつ、まだ何もわかってねえなあ、、、☚(꒪ټ꒪☚)haha
って素人扱いされるかもなのでね(そんな嫌な人はいないと思いますが)
目指す方向 | 調整の方向 | 求める色のイメージ | 必要な精神 | |
ミックス | 芸術性 | 神を恐れぬ積極的な調整 | カラフル | 実験性 |
マスタリング | 普遍性 | 神を細部に宿らす微調整 | クリア | 確実性 |
というわけで冒頭の表を再度載せます。
マスタリングって何すんの?
に対する僕の見解は以上となります。
とりあえずOzoneはすごいレベルにまできているので、マスタリングで悩んでいる方は是非試してみてくださいね!
最安はサウンドハウス、アップグレードならRock onさんが一番↓
それでは、お読みいただきありがとうございました!
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Reverb.comは、世界中の中古楽器や音響機材が買えるフリマサイト。ヤフオクやメルカリにはないレアなアイテムが見つかることも。新品の機材を代理店を通さず割安で買うことも可能です。
ebayは、世界最大のオークションサイト。ヴィンテージマイクや録音機材、マニアックな音響部品まで、探せばすごいお宝が見つかることも。みんな大好きNeveもずらり。英語がわからなくてもなんとかなります。