DIとは?
ライブハウスやリハーサルスタジオでたまに見かけるあのよくわからない四角いやつ。
COUNTRYMAN ( カントリーマン ) / TYPE85 ダイレクトボックス サウンドハウス
DTMに必須のオーディオインターフェースにも、実は付いています。
どんな時に使うものなのか?
どんな仕組みになっているのか?
を記事にします。
目次
ダイレクト・インジェクション・ボックス
DIはディーアイと呼びます。
またはダイレクトボックスなんて呼ばれ方もします。
「ダイレクトボックスなのにDIって略し方変じゃね?」って話なんですが、正式にはダイレクト・インジェクション・ボックスです。
なぜか日本ではDI、ダイレクトボックスと呼ばれていますが、その理由は知りません(´⊙౪⊙)۶
ダイレクト・インジェクション・ボックスは直訳すると「直接・接続・箱」です。
まさにそんな使い方をするためのアイテム。
開発の発端はビートルズの録音現場だったというのは非常に有名な話ですので、その逸話も含めてどんな使い方をするための物だったのか?について。
ギターを卓に直差しで録音したい!って偉い人が思った
ビートルズのプロデューサーで名高いジョージ・マーティンが提案した思いつき。
ギターを、レコーディングコンソールの入力部分に直接ぶち込みたい。
当時のレコーディング技術(環境)では、録音できるトラック数が限られているため(4トラックとか)ピンポン録音というやり方でトラック数を稼いでいました。
ピンポン録音とは、1〜3トラックをミックスでまとめて4トラック目に録音し、再度1〜3を空きトラックにして使用するという手法です。
さらに2〜4トラックをミックスして1トラックに録音すれば2〜4トラックを空きにすることができます。
これを繰り返せば、理屈の上では永遠にトラック数を増やす事が可能に。
僕も学生の頃、テープ式のMTRでこれをよく行なっていました。
しかし当時はアナログテープへの録音でしたので、ピンポンをすると音がどんどんぼやけていきます(劣化していく)
その不満に対して、ある日ジョージが思いついたのが「もっとパキッとした音で録音すれば、滲みを少しは解消できるんじゃ?」というもの。
そこからマイクを通さず、卓に直差しようと考えたようです。
この飛躍、クリエイティブですね!
そしてこのアイディアを実現するために、アビーロードの音響技術者に構想を相談してDIの原型ができた、と言われています。
世界初のDIがどんなものだったのか?は詳しくわかりませんが、どんな問題をクリアしてギター→卓に直差しを実現したのかは想像できますので、まずは、仮にDIなしでギターを卓に直差ししたらどんな風になるのか?を考えてみましょう。
ギター→卓直は音が細くなる
エレキギターをコンソールに直に挿すと、音が変に細くなります。
その上音量が非常に小さいので、ゲインを上げるとノイズもモリッと追加されます。
はっきり言って使い物になりません。
どうしてこうなるのか?
ギターのインピーダンスが高すぎる
インピーダンスというのは交流の抵抗値です。
ギターの信号は音声ですので交流です。
エレキギターやエレキベースは弦の振動をピックアップから拾ってますが、その出力の抵抗値(インピーダンス)は非常に高い。
つまり電流(ギターやベースの信号)を非常に微弱しか出力できない構造です。
音響の世界では接続方法の鉄則にハイ受け、ロー出しというものがあります。
これは出力する側は十分にインピーダンスを下げて(ロー出し)、入力する側は出力側よりもインピーダンスを高くしておくべしというルール。
これをしないと、前述のようにカリッカリの細い音になったり、ノイズが気になる程ゲインを上げなくてはならない自体に。
理想としては入力出力のインピーダンスは同じなのが最も信号伝送のロスがなく美しいとされていますが、なかなかそこまで各機材の規格を合わせるのは難しいので、ハイ受けローだしを守っておけば、音響的に大きな問題はない、とされています。
インピーダンスについての理論はちょっとややこしいので、別の機会に一本の記事にさせていただくとして、とりあえずここで必要なのはギターのインピーダンスを下げてハイ受けロー出しのスタイルに規格を合わせてあげる事。
ギターのインピーダンスが下がれば、相対的に卓側の入力をハイインピーの状態にできます。
そこで開発されたのが、信号のインピーダンスを下げる機材。
つまりDIです。
DIでインピーダンスを下げる
ということで、DIの役目の一つはギターやベースの信号のインピーダンスを下げること。
使う部品としては、オールド的にはトランス(パッシブタイプ)
-Jensenのトランス-
現代では電子回路を組んだもの(アクティブタイプ)で行なったりしています。
今でもあえて音の質感のためにトランスを使う場合もあります。
バッファーとしての役目
アクティブタイプのDIだとインピーダンスを下げた上で、出力信号を強化するバッファー回路を組み込んだものもあります。
というかわざわざアクティブにする理由はバッファーの追加が一番大きいかと。
バッファーについてはこちらでも書いていますので、もし良ければ!
DIのアウトはマイクインプットのインピーダンスに合わせている
ちなみにDIの出力は、卓側のマイク入力のインピーダンスに合う様に変換しています。
ライン入力ではありません。
そのためDIの出力側は、XLRのマイクケーブルが挿さる仕様になっています。
DIのもう一つの役目、バランス転送
そしてDIのもう一つ重要な役目となるのが、信号をアンバランス→バランスに変換する事です。
ギターはアンバランス出力、卓側のマイクインプットはバランス入力ですのでそこを合わせる必要があります。
またアンバランス出力はノイズに弱い構造なので、バランス化して上げることでその弱点をクリアすることもできます。
バランス/アンバランスについてはこちらの別記事に書いていますので、よろしければご参照ください。
エレキギター→卓直というのは、僕らの時代で進んでやる人はもういないでしょうが(´◔౪◔)
アコースティックギター→卓という形は、現在でもLIVEなどでとても一般的ですよね。
この→の部分にDIが挟まっているのは、もう説明不要ですね!
アクティブとパッシブどっちがいいのか?
前述の様にDIにはアクティブタイプ(電源いる)のものと、パッシブタイプ(電源いらない)があります。
どっちがいいのか?って話なんですが、個人的にはパッシブの方が音が好きです。
音や利便性、好みで選べばいいのではないでしょうか。
とはいえベースの場合は、アクティブでないとインピーダンス整合を仕切れない場合もあるらしいので、仕様の確認は必要です。
僕は自作のDI(パッシブ)で鳴らすベースの音も結構気に入ってます(`・ω・´) スペックを満たせているのかはわかりませんが。
そう考えると。インピーダンスとかそんな気にしなくてもいい様な気もしますね。
とか言っちゃダメですね。
アクティブ→電子回路、もしくは電子回路+トランスでDI回路を実現
パッシブ→トランスでDI回路を実現
オーディオインターフェースではHI-Zにギターを挿す
冒頭にも書きましが、オーディオインターフェースには大抵標準でDI入力が搭載されています。
HI-Zと書かれて入る端子です。
ハイズィー。ハイゼット。
Zはインピーダンスの単位です。
ここにギター、もしくはベースのシールドを挿せば勝手に最適なインピーダンスに変換をしてくれます。
とはいえ、あえてこだわる場合は手持ちのDIを使ってもいいでしょう(ꀀꎁꀀ)
その場合、DIのアウトはオーディオインターフェースのマイクインプットにXLRケーブルで挿す様にします!
レボリューション
まさに革命。
ビートルズのレボリューションのギターの音色はDIで録音されたものの様です。
ジョージ・マーティンがやりたかったのはこれだったのか?
音がいいのかは、、、、わかりませんが、当時には衝撃的な音だったんしょうね(;´༎ຶٹ༎ຶ`)
パッシブタイプの代表機種
パッシブDIといえばこちらが非常に有名。
いうまでもなく高音質なJensenのトランスを使用しています。
RADIAL ( ラジアル ) / JDI サウンドハウス
自作DIにも使用してますが、Jensenのトランスは非常に良いですよ。
アクティブタイプの代表機種
現代ではアクティブタイプのDIが圧倒的に多いですね。
どこのライブハウスにもある代表機種。
COUNTRYMAN ( カントリーマン ) / TYPE85 ダイレクトボックス サウンドハウス
これもどこのライブハウス、ライブカフェにもあります。スタンダード。
BOSS ( ボス ) / DI-1 サウンドハウス
プリアンプタイプのDI
ベーシストであれば誰もが知っている超有名プリアンプのサンズアンプ。
これ、一応DIにも分類されているんですね。
どちらかというと倍音やドライブ感を加えて音を積極的に変化させるエフェクターのイメージが強いので、純粋なDIとは言い難いですがこれがあればDIの機能も果たします。
TECH21 ( テック21 ) / Sansamp サンズアンプ サウンドハウス
まとめ
謎の小さい箱DIについてつらつらと書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
DTMerにはあまり必要のない機材ともいえます。
どちらかというとLIVE用途の方が思い浮かびます。
ただ、音にこだわってライン録音をする場合、専用のDIがあるといい結果になりやすいのも事実。
特にベースの録音では、プロの現場でもマイク録音と同時にパラでDIからライン録音することも多いです。
少しでもご参考にしていただければ幸いです。
お読みいただきありがとうございました!