DAWでまとめた2MIXを、一度ハード機材に通して味付けする。
DTMでもこだわり始めると、こういうことしてみたくなります。
プラグインも素晴らしい出来のものがたくさんあります。
しかしマニアな人はまだハード機材を使ってます。ハード機材には色々な利点があるので。
ただ、個人的にイマイチよくわかっていなかったことがありました。
ハード機材が生み出す「倍音」と言うトピック。
実際に試してみると前より分かったことがあったので、覚書きも含めてまとめます。
音で色々感じられるようにファイルも作ってみました。
目次
FATSO Jrで2MIXに倍音を加えて検証する
倍音を生み出すことに特化したハード機材があります。
EMPIRICAL LABS FATSO Jr。
FATSO Jrの後継モデルとして、 EMPIRICAL LABS EL7X Fatso
があります。
この機材で今回倍音の実験をしてみます。
EMPIRICAL LABS EL7X Fatso サウンドハウス
先にUADプラグイン版のFATSO Jrを使っていました。
当初は使い方をよく理解しないまま触っていましたが、質感はとても好きでした。
その後、実機を触ったことでUAD版の操作も理解しやすくなりました。
EMPIRICAL LABSといえばDISTRESSORが超有名です。
EMPIRICAL LABS ( インペリカルラボ ) / EL8X サウンドハウス
スタジオの定番コンプレッサー。
一方、FATSOはコンプレッサー(ステレオ)の機能もありつつ倍音をコントロールできるマシンとなっています。
EMPIRICAL LABSの機材は、アナログ音声回路をデジタルで制御していますが、
DAWのプラグインやLexiconリバーブのようなデジタル機材ではありません。
音声に関わる部分は歴としたアナログ機材です。
FATSO実機のコンプレッサー部分中心に音質検証した記事はこちら👇
DTM DRIVER!
Empirical Labs FATSO Jrレビュー|音源付きで試す多機能アナログコンプ | DTM DRIVER!
Empirical Labs FATSO Jrの実機レビューです。7種類のコンプレッサータイプ、TRANNYやWARMTHによる倍音付加、音源比較、アナログらしい質感をまとめています。
倍音とは?FATSO Jrの音を聴くために最低限整理
で、倍音ってなんなんだ?って話ですが。
倍音は、元の音の基本周波数に対して整数倍の周波数を持つ成分です。
耳でイメージするなら、元の音に薄く別の音が重なっているように感じることもあります。
DTMでは、こうした倍音成分が音色の印象にどう影響するのかが気になるところです。
- 2次倍音(オクターブのハモリ)
- 3次倍音(オクターブのうえ五度のハモリ)
2次・3次のような低次の倍音は、量や素材によって音色の印象を変えます。
真空管・テープ・トランスでは倍音の出方が変わる
真空管回路では、2次・3次など低次の倍音が目立つことがあります。
アナログテープも入力レベルに応じて飽和し、倍音成分や周波数バランスが変化します。
真空管とテープでは仕組みは違いますが、どちらも色付けとして使われることがあります。
NEVEなどで話題になる「トランス」も、飽和や周波数変化を含む非線形な色付けに関わります。
機材ごとに、加わる倍音や歪みの出方は違います。
非線形歪みで倍音成分が増えることがある
アナログ機材では、回路の非線形性によって倍音成分を含む歪みが加わることがあります。
こうした成分は「ハーモニックディストーション」として表されます。
高調波成分を含む歪み、ということです。
テープへ強く入力したときの音色変化も、飽和や倍音、周波数変化が組み合わさって生まれます。
測定上の性能と音楽的な好みは別
なぜ古いアナログ機材ほど倍音をたくさん生むのでしょう?
測定上の低歪みとは別に、制作では真空管や古い回路の色付けが好まれる場面もあります。
音響性能が良い=音楽的
とは必ずしも限らないのが、録音の奥深さです。
僕自身、少し汚れた質感の方が気持ちよく感じる場面があります。
倍音を加えたときに感じる太さや暖かさ
倍音成分が変わると、音色の密度や輪郭の感じ方も変わります。
僕自身、倍音を加えた音を聴くと太くなったように感じます。
同時に、暖かいと感じる場面もあります。
ただし、テープやトランスの音色変化は倍音だけで決まるわけではありません。
高域の変化や飽和も含めて、全体の質感として暖かく感じることがあります。
FATSO Jrで倍音を加えた音を比較
ここからは、実際にFATSO Jrへ音を通して変化を聴き比べます。
FATSO Jrには、サチュレーションやWarmth、TRANNYといった音色を変える機能があります。
ステレオコンプレッサーでもありますが、今回は音色変化に関わる機能へ絞って見ていきます。
- Inputを上げてサチュレーション/倍音成分を増やす
- Warmthでテープ系の高域変化を作る
- TRANNYでトランス回路を通す
それぞれ単独でも組み合わせても使えます。
実際に音源を通してどう変化するのか、ファイルを作ったので並べて聴いてみます。
各ファイルはDAWのPEAKメーターを見て音量を揃えています。
音圧は若干変わってくると思いますので、あしからず。
元のファイルはLOGIC Xのループサンプルを組み合わせて作ったものになります。
元のファイル
真空管の倍音を薄く加えたファイル
真空管の倍音を薄く加えた+トランスを通したファイル
真空管の倍音を深く加えたファイル
真空管の倍音を深く加えた+トランスを通したファイル
アナログテープの倍音を加えたファイル
アナログテープの倍音を加えた+トランスを通したファイル
倍音を加えて感じた音の変化
んー!!
倍音を加える量が深くなると、音量も上がってきますね。
ピークメーター上は全てほぼ一緒なんですが、音圧感が増してきます。
倍音を加えるとやっぱり音の輪郭がはっきりして、低音も迫力が増えていくように聴こえます。
そして何よりリッチですね。 音がリッチ。
特にアナログテープの倍音感はかなり好きです。キックがたまらない。
FATSO Jrで倍音を加えた設定
倍音をどう操作したのかも記録しておきます。
操作はシンプルですが、僕には音の変化が分かりやすい機材です。
Inputを上げて倍音成分を増やす
Inputを上げていくと、サチュレーション回路による倍音成分が増えていきます。
コンプレッサーはオフです。
「0 VU」のLEDは、歪み量を見る目安になります。
0 VU LEDが点灯するあたりで、THDは約1%。Inputを上げるほど倍音成分も増えていきます。
そのファイルがこちらでした。
真空管の倍音を薄く加えたファイル
さらにInputを上げていくと、
「Pinned」LEDが点灯し始めます。
Pinned LEDは、THDが5%以上になったことを示す目安です。
そのファイルがこちら。
真空管の倍音を深く加えたファイル
仕様上はTHDを最大20%程度まで増やせますが、そこまで行くとかなり汚い音になります(笑)
Warmthで高域の質感を調整する
Warmthも操作自体はシンプルです。
Warmthは0〜7の設定で、高域を動的に抑える量を調整します。
処理量が増えると、上のLEDメーターにゲインリダクション量が表示されます。
3〜5dB程度でも変化は分かりやすいので、かけすぎないように聴きながら調整します。
Warmthでは高域が動的に抑えられ、メーターには20kHz付近でのゲインリダクション量が表示されます。
アナログテープで高域が柔らかくなるような質感を狙った機能です。
アナログテープの倍音を加えたファイル
ハイが痛いソースへの単独使用も推奨しているので、昔のディエッサーのようにも使えるのかな?
FAIRCHILD 602って昔持っていた機材を思いましました、、、。
確かに少し質感が似ているかも。
TRANNYをオンにした音を比較する
TRANNYも操作はシンプルです。
ボタンひとつで切り替えられます。
「TRANNY」をオンにします。
これだけでトランスの質感が加わります。
TRANNYは本体内の切り替え可能なトランス回路を使う機能です。
これをオンにすると、僕には音色がはっきりするように聴こえます。
真空管の倍音を深く加えた+トランスを通したファイル
FATSO Jrを使って倍音の違いが分かりやすくなった
実際に音を比べると、倍音や高域処理、TRANNYで質感がそれぞれ変わります。
FATSO Jrは、さらにコンプも含めて一台で複数の処理ができるのが便利です。
僕にはかなり使いどころの多い機材でした。
ポチップ
プラグインでもハマっていましたが、実機を使ってもっとハマりました。
そして改めて感じたのが、ハード機材ってやっぱ良いなあと。
ただ、他の手持ち機材も良い音色がするので、、どれもこれも愛おしい。
そして、次の獲物がどんどんどんどん欲しくなる。ほんと沼ですね。
色々と手にとって触ってみないとわからないことばかりですから。
FATSO実機のコンプレッサー部分中心に音質検証した記事はこちら👇
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Empirical Labs FATSO Jrレビュー|音源付きで試す多機能アナログコンプ | DTM DRIVER!
Empirical Labs FATSO Jrの実機レビューです。7種類のコンプレッサータイプ、TRANNYやWARMTHによる倍音付加、音源比較、アナログらしい質感をまとめています。
まとめ|FATSO Jrで倍音を加えると音の密度と質感が変わった
言葉では知っていたけど、理解しづらかった倍音。
体感しながら論理を紐解いていくと前より「なるほど」となれそうです。
EMPIRICAL LABS FATSOは2MIXだけでなく、トラック単体でも使える機材です。
そういえば、RUPERT NEVE DESIGNS Portico II Master Buss Processorにも似たような「倍音付加」っぽいボタンあったな。とか。
「なんとなくこれ良いね!」と使っていた機能も、実際に音を比べたことで以前より意味を理解しやすくなりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。