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ボーカルミックスのやり方|録音した声をオケに馴染ませる基本

ボーカルミックスでは、EQやコンプレッサー、リバーブなどを使いながら、録音した声をオケの中へ馴染ませていきます。

ただ、Pluginを順番に挿していけば自然にまとまるわけではありません。

ボーカルが埋もれているのか、逆に浮いているのか。音量差が大きいのか、録り音そのものに問題があるのか。同じ「ボーカルがうまく混ざらない」という状態でも、原因は違います。

僕の場合も、最初から処理を増やすのではなく、まず録音された声とオケの関係を確認して、必要なところから触っていきます。

目次

ボーカルミックスはPluginを挿す前に音量を合わせる

録音したボーカルをミックスへ入れたら、最初に確認するのはオケとの音量バランスです。

EQやコンプを挿していない状態でも、フェーダーを動かすだけで、どこまで上げると前へ出すぎるのか、どこまで下げると埋もれるのかは見えてきます。

まずフェーダーだけでオケとの位置を決める

ボーカルだけをソロで聴けば、ノイズや細かい音色は確認できます。

ただ、最終的に必要なのはオケの中で成立する音量です。最初の位置は、曲全体を鳴らした状態で決めます。

声が小さければ埋もれますし、大きすぎれば伴奏から離れて聞こえます。ここがずれたままEQやコンプへ進むと、本来はフェーダーで済む問題まで別の処理で補うことになります。

小さい部分と大きい部分の差も確認する

全体の音量を合わせても、曲の途中で急に声が飛び出したり、特定の言葉だけ聞こえなくなったりすることがあります。

これはボーカル全体の音量とは別の問題です。

まず全体の位置を決めて、そのうえでフレーズごとの音量差を確認していくと、コンプで整える部分とオートメーションで動かす部分を分けやすくなります。

ボーカルの音量差を整える方法はこちら👇

録り音に問題がないか先に確認する

ミックス処理へ進む前に、録音されたファイル自体も一度確認します。

ノイズ、クリップ、不要な物音、極端な音量差が残っているなら、EQやコンプで音色を作る前に処理した方がいい部分もあります。

タイミングやピッチの違和感は別に考える

歌のタイミングがオケから外れている場合、EQを変えてもタイミングは直りません。

ピッチの違和感も同じで、音色やダイナミクスを整える処理とは別に考えた方が分かりやすいです。

歌そのものの問題と、音量や音色の問題を分けておくだけでも、必要のないEQやコンプを重ねにくくなります。

ボーカルのタイミング補正をどこまで行うかはこちら👇

録り音そのものがこもっている場合もある

マイクや録音環境によっては、録った時点ですでに低中域が強かったり、高域が少なかったりすることもあります。

EQで補正できる範囲はありますが、録り音の特徴まで全部ミックスの中だけで直そうとすると、必要以上に大きな補正になることもあります。

EQでボーカルの不要な部分を整理する

音量の位置が決まったら、EQでボーカルの帯域を整えていきます。

ここでも、最初から決まった周波数を削るというより、オケと一緒に鳴らした時に何が邪魔になっているのかを確認します。

低域は必要な声まで削らない

ボーカルには、歌としてほとんど必要のない低い成分が入ることがあり、ローカットで整理することはよくあります。

ただ、カットする周波数を上げるほど明瞭になるわけではありません。

必要な低域まで削れば、声の厚みもなくなります。数値だけで決めず、声の芯や胴体が痩せてこない位置を確認しながら調整します。

こもりは低中域だけが原因とは限らない

ボーカルがこもって聞こえると、低中域を削りたくなります。

実際にその帯域が多いこともありますが、オケ側と同じ帯域で重なっていたり、高域が少なかったり、録音時点から暗い音だったりしても、似た聞こえ方になります。

低中域を削って変わるのか、それとも別の原因なのかを分けないまま大きく削ると、こもりが残ったまま声だけ細くなることもあります。

高域を足す前にオケとの関係を見る

抜けを出すために高域を持ち上げる方法もあります。

ただ、オケ側にボーカルと重なる音が多ければ、声だけを明るくしても十分に聞こえてこない場合があります。

ボーカル単体を良い音にすることと、オケの中で聞こえるようにすることは同じではありません。必要ならオケ側も含めて、どこで重なっているのかを確認します。

ボーカルEQの基本と帯域ごとの考え方はこちら👇

コンプレッサーで声の動きを整える

ボーカルはフレーズによって音量がかなり変わります。

コンプレッサーを使うと、大きく飛び出した部分を抑えながら、オケの中で声の位置を安定させやすくなります。

音量を完全に一定にする処理ではない

コンプを深くかければ、音量差は小さくなります。

その一方で、声の立ち上がりや抑揚まで強く押さえると、歌の動きも平坦になっていきます。

ボーカルの音量差を全部コンプだけで消そうとせず、飛び出す部分を整えたうえで、残った差はフェーダーでも調整します。

コンプだけで揃えようとしない

一つの単語だけ小さい、Aメロとサビで必要な音量が違う、といった問題までコンプだけで処理すると、他の部分まで必要以上に圧縮されることがあります。

コンプレッサーで声そのものの大きな動きを整え、曲の中で必要な上下はフェーダーオートメーションで作る。この二つは、同じ音量に関わる処理でも役割が違います。

ボーカルコンプの設定と基本パラメータはこちら👇

歯擦音や耳につく高域は必要なところだけ処理する

EQやコンプをかけた後に、「サ行」や「シ」の音だけが強く飛び出して聞こえることがあります。

こういう場合は、ボーカル全体の高域をEQで下げるより、ディエッサーで歯擦音が出た時だけ抑えた方が、声全体の明るさを残せます。

逆に、特定の子音ではなくボーカル全体が硬い、耳に刺さると感じるなら、歯擦音だけの問題ではありません。EQ、コンプ、録り音まで含めて原因を分けます。

リバーブとディレイでオケとの距離を作る

ボーカルの音色とダイナミクスがある程度決まったら、リバーブやディレイで空間を作っていきます。

ここで変わるのは、単純な豪華さだけではありません。残響や反復音が加わることで、ボーカルが近く聞こえるのか、奥に聞こえるのかという距離感も変わります。

リバーブは多ければ馴染むわけではない

乾いたボーカルだけが前へ飛び出している時は、リバーブを足すことでオケと同じ空間に入ったように聞こえることがあります。

ただ、残響を増やしすぎると声の輪郭が後ろへ下がり、歌詞も聞こえにくくなります。

ボーカルが浮いているからとリバーブだけを増やすと、前に出すぎていた声が今度は奥へ下がりすぎることもあります。

リバーブでボーカルが遠くなる原因はこちら👇

ディレイなら声の輪郭を残しながら空間を足せる

ディレイも、ボーカルの奥行きや広がりを作る時によく使います。

リバーブとは音の残り方が違うので、メインの声を比較的近くに置いたまま、後ろや周囲へ空間を足したい時にも使えます。

リバーブとディレイのどちらが正解ということではなく、その曲でボーカルをどの距離に置きたいかによって使い方は変わります。

最後はオートメーションで曲の中の音量を整える

EQとコンプまで終わっても、曲を最初から最後まで流すと、まだ声が聞こえにくい場所や飛び出す場所は残ります。

そこでフェーダーオートメーションを使い、曲の展開に合わせてボーカルの音量を動かしていきます。

Aメロとサビでは必要な音量が変わる

Aメロでは伴奏が少なく、同じフェーダー位置でも声が十分聞こえていたのに、サビで楽器が増えると急に埋もれることがあります。

こういう時は、ボーカルの音色をさらに変えなくても、サビだけ少し音量を上げればまとまることがあります。

一つの言葉だけ動かすこともある

小さくなった語尾や、一瞬だけ飛び出した言葉など、コンプでは自然に揃えきれない部分は個別に動かせます。

ボーカルミックスはPluginの設定を決めて終わりではありません。曲を流しながら、必要なところで声の音量を動かす作業まで含めて仕上げていきます。

ボーカルオートメーションが必要になる理由はこちら👇

ボーカルが馴染まない時は原因を一つに決めない

ボーカルミックスで迷いやすいのは、原因が違っていても似た聞こえ方になることです。

声が聞こえないからといって、必ず音量が小さいわけではありません。

埋もれるなら音量だけとは限らない

ボーカルが埋もれる原因には、音量だけでなく、オケとの周波数の重なり、声のダイナミクス、リバーブやディレイの量なども関係します。

フェーダーを上げるだけで聞こえる場合もあります。一方で、オケと同じ帯域に声が隠れているなら、音量を上げてもボーカルだけが明確になるとは限りません。

ボーカルが埋もれる原因を分けて確認するならこちら👇

浮いているならリバーブ不足だけとは限らない

ボーカルだけが伴奏から離れて聞こえる時も、原因は空間系だけではありません。

ボーカルの音量が大きすぎる場合もありますし、コンプによって声だけが強く前へ張り付いていたり、オケに対して特定の帯域だけが目立っていたりすることもあります。

こういう違いを分けずにリバーブだけ増やすと、元の原因を残したまま距離だけが変わってしまいます。

ボーカルだけがオケから浮く原因はこちら👇

細い・こもる・硬いは別の問題として考える

声が細いなら低域を足す、こもるなら低中域を削る、硬いなら高域を下げる、と一つのEQ操作へ直結させると、別の部分まで崩れることがあります。

細さ、こもり、硬さは似たEQ操作で触れられても、同じ問題ではありません。録り音、ダイナミクス、オケとの重なり、空間の作り方によって原因は変わります。

僕は、まず何が起きているのかを分けてから、それに合う処理を選ぶようにしています。

ダブリングやハモリはメインボーカルが決まってから足す

メインボーカルがある程度決まったら、必要に応じてダブリングやハモリを加え、厚みや広がりを作っていきます。

ダブリングは声の厚みを作れる

同じフレーズを別テイクで重ねると、一つのボーカルトラックだけでは出にくい厚みが加わります。

ただ、重ねた声までメインと同じ位置へ強く出すと、発音やタイミングの差まで前に出て、言葉の輪郭がぼやけることがあります。

左右へ広げてもセンターの軸は残す

ダブルや追加ボーカルを左右へ配置すると、センターのメインボーカルを残したまま横方向へ広げられます。

メインの声まで無理に広げるより、中央の歌を軸にして、その周囲へ追加の声を置く形の方がセンターを保ちやすくなります。

ハモリはメインとの関係で決める

ハモリも単体で良い音にするだけではなく、メインボーカルをどう支えるかで音量や定位を決めます。

ハモリが前へ出すぎると主旋律とぶつかりますし、下げすぎると入れた声がほとんど聞こえません。メインを基準に、その曲で必要な位置まで出していきます。

ボーカルミックスの基本的な流れ

ボーカルミックスでは、Pluginを何個挿すかより、今起きている問題を順番に分けていく方が進めやすいです。

  1. 録り音に問題がないか確認する
  2. フェーダーでオケとの基本的な音量を決める
  3. EQで不要な帯域やオケとの重なりを整理する
  4. コンプレッサーで声のダイナミクスを整える
  5. 必要ならディエッサーで歯擦音を処理する
  6. リバーブやディレイで距離と空間を作る
  7. オートメーションで曲の中の音量を仕上げる
  8. 必要に応じてダブルやハモリを加える

基本は、音量を決めてから帯域とダイナミクスを整え、その後で曲の中の音量と距離感を詰めていく流れです。

実際には、コンプをかけた後にEQへ戻ることもありますし、リバーブを入れてからフェーダーを少し下げることもあります。

順番を完全に固定する必要はありませんが、最初から全部を同時に触るより、音量、帯域、ダイナミクス、距離感の順に確認していく方が、どの処理で何が変わったのかを追いやすくなります。

Pluginだけで十分に仕上がるなら、それで問題ありません。それでも大きな補正を重ねないとまとまらない時は、ミックス処理を増やし続けるより、録り音や録音環境まで戻って確認した方が早い場合もあります。

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