ボーカルの高音が痛い時は、高域をまとめて下げれば直るとは限りません。
サ行だけが刺さるのか、声全体の輪郭が硬いのか、高い音程を歌った時だけ強くなるのかで、原因も処理も変わります。
高域を大きく削れば耳当たりは弱くなりますが、ボーカルに必要な明るさや抜けまで失うことがあります。
まずは、どの瞬間に何が痛く聞こえているのかを分けます。
目次
ボーカルの高音が痛い原因は一つではない
同じ「高音が痛い」という状態でも、実際に強く聞こえている場所は同じとは限りません。
歯擦音だけが飛び出している場合もあれば、声全体の中高域が強い場合、高い音程を歌った時だけ硬くなる場合もあります。
サ行だけ刺さる
「サ」「シ」「ス」などの発音だけが鋭く飛び出すなら、歯擦音が強く出ている可能性があります。
母音や声全体の明るさは問題ないのに、一部の子音だけ痛いなら、高域全体を下げるより歯擦音だけを分けて処理した方が自然です。
声の輪郭全体が硬い
サ行だけではなく、言葉の頭や母音まで含めて声全体が硬く聞こえることもあります。
この場合は、ディエッサーだけではなく、中高域から高域にかけてのバランスを確認します。
高い音程を歌った時だけ痛い
普段のフレーズでは問題ないのに、高い音程を強く歌った時だけ耳に刺さることもあります。
歌う音程や発声が変われば、声に含まれる倍音のバランスも変わります。
一部の高音フレーズだけが問題なら、固定EQで曲全体を暗くするより、その瞬間だけ処理する方法が合うことがあります。
オケに入れた時だけ痛く感じる
ボーカルをソロで聴くと問題ないのに、オケへ戻すと急に耳当たりが強くなることもあります。
この場合は、ボーカル単体だけでなく、ギターやピアノ、シンセなどの中高域と重なっていないかも確認します。
まず歯擦音だけが強いのか確認する
高域が痛い時に最初に分けたいのが、歯擦音だけの問題なのか、声全体の音色なのかです。
ここを分けずに上側をまとめて削ると、必要だった明るさまでなくなります。
サ行など特定の子音だけ飛び出していないか
曲を通して聴いた時に、特定の子音だけ瞬間的に耳へ刺さるなら、その発音だけを切り分けます。
母音まで硬いわけではないなら、ボーカル全体のEQを大きく変える必要はありません。
歯擦音と声全体の明るさは別
明るいボーカルだからといって、必ず歯擦音が強いわけではありません。
反対に、声全体は暗めでも、一部のサ行だけ鋭く録れていることもあります。
声全体の明るさと、瞬間的に飛び出す歯擦音は別の問題として扱います。
歯擦音だけならディエッサーを使う余地がある
歯擦音だけが問題なら、ディエッサーでその成分が強く出た時だけ抑える方法があります。
高域全体を暗くせず、一部の発音だけを抑えられるのが利点です。
ただし、声全体が硬い場合までディエッサーだけで追い込むと、子音の抜けや発音まで鈍くなることがあります。
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中高域が強いと声全体が硬く聞こえる
サ行だけではなく、ボーカル全体の輪郭が鋭く聞こえるなら、中高域も確認します。
このあたりには言葉の輪郭や存在感に関わる成分がありますが、強くなりすぎると耳への当たりも強くなります。
輪郭を出す帯域は上げすぎると刺さる
ボーカルを前へ出したくて中高域を持ち上げると、発音や輪郭は見えやすくなります。
そこからさらに上げると、強い母音や子音まで硬くなり、耳へ当たり始めることがあります。
聞こえるようになった後も上げ続けず、必要な輪郭が出たところで一度止めます。
プレゼンスを足しすぎていないか確認する
ボーカルが埋もれる時に、中高域を足して前へ出そうとすることがあります。
ただ、埋もれている原因が音量や周囲とのマスキングなら、中高域を足し続けても根本は変わりません。
EQをバイパスした時に痛さが大きく減るなら、追加したプレゼンスが強すぎないか確認します。
広く削ると今度は声が引っ込む
痛いからと中高域を広く大きく削れば、耳当たりは弱くなります。
その一方で、言葉の輪郭や存在感まで一緒に後ろへ下がることがあります。
痛い場所を減らすことと、ボーカル全体を引っ込めることは分けて考えます。
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高域を上げすぎて痛くなっている場合もある
ボーカルへ明るさや空気感を足した後から痛くなったなら、高域側のEQも確認します。
欲しいAir感と同じ範囲に歯擦音や息の強い成分が含まれていれば、それも一緒に前へ出ます。
Airを足す処理でも歯擦音は目立つことがある
高い帯域を持ち上げると、声の空気感や息遣いが増えることがあります。
同時に、同じ範囲に含まれる歯擦音や細かいノイズまで聞こえやすくなる場合があります。
声全体の明るさは欲しいのにサ行だけ痛いなら、高域を全部戻す以外に、歯擦音だけを分けて処理する方法もあります。
シェルフEQを広く上げすぎない
ハイシェルフは、設定した周波数付近から上側を広く持ち上げる処理です。
明るさが足りないからと大きく上げると、欲しかったAir感だけでなく、すでに強かった高域まで一緒に増えます。
明るさと痛さを分けて聴く
明るい声と痛い声は同じではありません。
声全体にはもう少し明るさが欲しいのに、一部の帯域や発音だけ耳へ刺さることもあります。
上側をまとめて削る前に、どの瞬間とどの範囲だけが強いのかを分けます。
コンプ後に高域が目立つことがある
EQをほとんど変えていないのに、コンプを入れた後から歯擦音や息が気になることもあります。
コンプレッサーが新しい高域を作っているとは限りません。圧縮によって声のダイナミクスが変わり、その後のゲイン補正も含めて、もともと入っていた細かな成分の聞こえ方が変わることがあります。
圧縮すると声の中のバランスも変わって聞こえる
大きく出る母音やフレーズが圧縮されると、圧縮前より音量差が小さくなります。
その結果、それまで相対的に目立たなかったブレスや細かな成分が聞こえやすくなることがあります。
メイクアップゲイン後に耳当たりが変わることもある
圧縮後にメイクアップゲインで全体のレベルを戻すと、処理後のボーカル全体が再び前へ出ます。
その状態で歯擦音やブレスが気になるなら、単純にEQだけを削る前に、コンプ前後を同程度の音量で比較します。
EQだけでなくコンプ前後を比較する
コンプをバイパスすると自然になるなら、EQだけを直すより、圧縮の仕方を見直した方が合うことがあります。
Threshold、Ratio、Attack、Release、ゲインリダクション量などを変えると、声の動きや前への出方も変わります。
ディエッサーで全部の痛さを直そうとしない
ボーカルの高域が痛い時にディエッサーを使う方法がありますが、すべての硬さに向いているわけではありません。
主に使うのは、歯擦音など特定の帯域が瞬間的に強くなる時です。
ディエッサーは主に歯擦音を狙う
サ行などが出た時だけ特定の高域が強くなるなら、ディエッサーでその瞬間を抑えられます。
問題が出ていない母音や声全体の明るさを残しながら処理できるのが利点です。
声全体が硬いならEQ側を見る
一部の子音ではなく、歌っている間ずっと声が硬いなら、ディエッサーだけでは原因と処理が合わないことがあります。
中高域や高域をEQで足しすぎていないか、録り音の時点ですでに硬くないかを確認します。
強くかけすぎると発音が鈍る
ディエッサーを深くかければ、歯擦音をさらに小さくできます。
ただ、処理量が大きすぎると必要な子音まで弱くなり、発音が曖昧に聞こえることがあります。
歯擦音をなくすのではなく、他の発音から不自然に飛び出さないところまで戻します。
高音を削りすぎると声が暗くなる
耳に痛い成分を減らすことと、高域全体を暗くすることは同じではありません。
広い範囲を削れば痛さは弱くなりますが、ボーカルに必要な明るさや抜けまで一緒に失うことがあります。
痛い場所と明るさを作る場所は同じとは限らない
耳へ刺さっている成分が中高域にあり、その上の高域には必要な明るさが残っていることもあります。
反対に、ハイシェルフで上げた高域全体が強すぎる場合もあります。
「高音が痛い」という印象だけで上側をまとめて削らず、どこを下げると何が変わるのかを確認します。
広いハイカットで全部落とさない
高域が痛いからとハイカットを大きく下げると、刺さりだけでなく、息遣いや空気感までなくなります。
録り音そのものを暗くしたい場合は別ですが、一部だけが問題なら、その場所に合わせた処理の方が声を残せます。
問題の出方に合わせて処理を分ける
特定の範囲が常に強いなら固定EQ、一部の発音だけならディエッサー、特定のフレーズでだけ強くなるならDynamic EQやオートメーションというように、問題の出方で処理を分けられます。
声全体を暗くする前に、処理する範囲をどこまで限定できるかを確認します。
オケとの重なりで痛く聞こえることもある
ボーカル単体では自然なのに、オケへ入れると急に耳当たりが強くなることがあります。
この場合は、同じ中高域へ複数の楽器が重なり、ミックス全体としてその範囲が強くなっていないかを確認します。
ギターやシンセの中高域と重なっていないか
歪んだギター、明るいピアノ、シンセなどがボーカルと近い中高域を強く使っていると、全体の耳当たりが強くなることがあります。
ボーカルをソロにすると問題が消えるなら、周囲の楽器も一緒に確認します。
ボーカルだけ削る前に周囲も確認する
ボーカルが一番目立つからと、そのトラックだけを削り続けると、声だけが暗くなることがあります。
周囲の楽器を少し整理した方が、ボーカルの明るさを残したまま耳当たりを落ち着かせられる場合もあります。
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ソロでは問題なくてもミックスで痛い場合がある
ボーカル単体では強く感じなかった帯域でも、同じ範囲へ複数の音が重なると、ミックス全体では強く聞こえることがあります。
最終的な削り量はソロだけで決めず、オケの中で耳への当たりがどう変わるかを聴きます。
録り音の時点で硬い場合もある
EQやコンプを外しても高域が痛いなら、録音された声そのものに原因が残っています。
マイクとの距離や角度、マイク自体の周波数特性、部屋から入る反射によっても高域の聞こえ方は変わります。
マイクとの距離や角度でも音色は変わる
同じマイクでも、口との距離や向きを変えると録音される声のバランスは変わります。
処理前から高域が強いなら、EQを足した結果だけではなく、どんな位置で録った声なのかも切り分けます。
軸上と軸外で高域の出方が変わるマイクもある
マイクは、正面と斜め方向で同じ周波数特性になるとは限りません。
マイクによっては、正面から少し外すことで高域の入り方が変わります。
ただし、斜めにすれば必ず良くなるわけではありません。実際に使っているマイクの特性と録れた音で判断します。
部屋の反射が硬さへ加わる場合もある
壁や床からの反射が強い環境では、直接音だけでなく部屋の響きもマイクへ入ります。
その反射に耳へ当たる成分が多ければ、録り音全体の硬さへ加わることがあります。
録り直せるなら録音側を変える方法もある
大きくEQを削らないと成立しないほど録り音が硬いなら、録り直せる状況では録音側へ戻る方法もあります。
マイクとの距離や角度、歌う位置を変えることで、後から大きく削らなくても扱える音になる場合があります。
高い音程を歌った時だけ痛い場合
曲全体では問題ないのに、高音フレーズだけ耳へ刺さることがあります。
こうした場合は、ボーカルトラック全体へ固定EQをかけるより、そのフレーズでだけ強くなる成分を処理した方が、他の部分を残せます。
歌い方で倍音バランスが変わる
同じ歌い手でも、低い音程を静かに歌う時と、高い音程を強く張る時では、声の倍音バランスは同じではありません。
そのため、普段は問題のない中高域が、高音フレーズでだけ強く聞こえることがあります。
同じEQでもフレーズごとに刺さり方が違う
固定EQは、設定した帯域を曲の間ずっと同じ量だけ動かします。
一部の高音フレーズだけが問題なら、その場所に合わせて深く削るほど、それ以外のフレーズまで暗くなります。
必要ならDynamic EQやオートメーションを使う
特定の帯域が強くなった時だけ抑えたいなら、Dynamic EQを使う方法があります。
問題が特定のフレーズだけなら、その区間だけEQや音量をオートメーションで動かす方法もあります。
問題のない場所まで常に削らず、必要なところだけ処理できます。
ダイナミックEQで痛い時だけ抑える方法
ボーカルの高域が常に強いのではなく、特定の言葉や音程だけ飛び出すなら、Dynamic EQが合う場合があります。
固定EQとの違いは、設定した帯域を常に同じ量だけ削るのではなく、その帯域が設定した条件を超えて強くなった時に処理量を増やせることです。
必要な時だけ動かせる
普段は自然なのに、高音フレーズだけ特定の中高域が強くなるなら、その範囲へDynamic EQを設定できます。
問題が出ていない時は大きく削らず、強くなった時だけ抑えられます。
声全体の明るさを残しやすい
固定EQで常に高域を下げると、自然だったフレーズまで暗くなります。
必要な時だけ動かせれば、普段の声にある明るさや抜けを残したまま、飛び出すところだけ抑えられます。
深く動かしすぎない
Dynamic EQでも、深く動かせばその瞬間の音色は大きく変わります。
痛い成分を完全になくすのではなく、周囲のフレーズから不自然に飛び出さないところまで戻します。
ボーカルの高音が痛い時の確認順
高域が痛い時は、最初から上側をまとめて削らず、どこで痛さが出ているのかを順番に分けます。
- サ行など特定の子音だけなのか、声全体が硬いのかを分ける
- EQやコンプを外し、録り音の時点ですでに硬くないか確認する
- 中高域を上げすぎていないか確認する
- 高域シェルフを足しすぎていないか確認する
- コンプを入れた後だけ歯擦音や息が目立っていないか比較する
- 歯擦音だけが強いならディエッサーを検討する
- 特定のフレーズだけならDynamic EQやオートメーションで必要な場所だけ動かす
- ギターやシンセなど、オケ側の中高域も確認する
- 最後にソロではなくミックスの中で耳への当たりを決める
歯擦音だけならディエッサー、声全体が硬いならEQや録り音、高音フレーズだけなら動的な処理というように、同じ「痛い」でも処理する場所は変わります。
高域を全部削れば耳当たりは弱くできますが、必要だった明るさや輪郭までなくなります。痛さがどこから出ているのかを分け、その部分だけを必要なところまで戻す方が、ボーカル本来の明るさを残せます。
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