ボーカルにリバーブをかけると、空間は出たのに、声まで急に遠くなったように聞こえることがあります。
メインボーカルの存在感は残したいのに、リバーブを足すほどオケの奥へ下がってしまう。こういう時は、単純にリバーブの量だけを減らしても、今度は空間そのものがなくなります。
距離感は、Send量やWet量だけではなく、Pre Delay、Decay、残響の明るさ、低域の量、Early Reflectionsでも変わります。
僕はまずドライのボーカルを成立させてから、必要な残響を後ろへ足していきます。声を前に残したい時は、リバーブをどれだけ入れるかだけでなく、原音と残響がどのタイミングで、どのくらい重なっているかを見ます。
目次
ボーカルにリバーブをかけると遠く聞こえるのはなぜ?
リバーブを加えると、ボーカルの直接音に対して残響成分が増えます。
その残響が強くなるほど、乾いた声だけを聞いていた時よりも、空間の中で鳴っている印象が大きくなります。
直接音に対して残響の割合が増える
ボーカル本体の直接音に対して残響の割合が増えると、声そのものよりも周囲の空間が目立ってきます。
その結果、目の前で鳴っているような近さが弱まり、少し離れた位置に声があるように感じることがあります。
リバーブを足した瞬間に声が大きく奥へ下がったなら、最初に残響量を戻して変化を見ます。
輪郭に残響が重なると距離が出る
言葉の頭や子音が鳴った直後から残響が強く重なると、ドライの状態より輪郭が見えにくくなります。
ボーカルのフェーダー位置は変わっていなくても、原音と残響の境目が曖昧になることで、前にいる感じが弱くなることがあります。
暗い残響は奥に感じることがある
高域が落ち着いた暗い残響は、明るく輪郭のある残響よりも奥に引いた印象になることがあります。
同じくらいの残響量でも、リバーブの明るさが違えば、ボーカルの距離感も同じには聞こえません。
まずWet量やSend量が多すぎないか見る
リバーブを入れて声が遠くなった時に、最初に確認しやすいのは残響の量です。
ここが多すぎるなら、Pre DelayやDecayを細かく触る前に、Send量やWet量を少し戻すだけで声が前へ戻ることがあります。
残響が増えるほど直接音の存在感は相対的に下がる
Send量やWet量を上げると、ボーカルの周囲に聞こえる残響が増えます。
ドライ音のレベルを変えていなくても、残響が大きくなれば、全体の中で直接音が占める割合は相対的に小さくなります。
空間を付けたいだけなら、リバーブ自体がはっきり聞こえるところまで上げなくても成立します。
少量でも空間は作れる
リバーブは、ソロで残響がよく分かる量まで上げる必要はありません。
オケの中では、リバーブを切った時に少し乾いて感じるくらいでも、入っている時にはボーカルと周囲の音が自然につながることがあります。
残響そのものを聞かせたい場面でなければ、少ないところから足した方が、声の位置を見失いにくいです。
InsertとSendではWetの考え方が違う
リバーブをSendで使う場合は、元のボーカルを残したまま、別のReturnへ残響だけを足せます。
この使い方では、リバーブPlugin側をWet 100%にして、Send量やReturnフェーダーで残響の量を決める方法が一般的です。
Insertで直接かける場合は、Plugin内のDry/Wetで原音と残響の割合を作ります。
どちらでもリバーブは使えますが、今どこでドライ音と残響の比率を変えているのかは分けて考えます。
Pre Delayでボーカル本体と残響を離す
残響量を減らすと空間まで消えてしまう時は、Pre Delayを見ます。
Pre Delayは、原音が鳴ってからリバーブが立ち上がるまでの時間です。
ここを動かすと、残響量を大きく変えなくても、ボーカル本体とリバーブの重なり方を変えられます。
Pre Delayが短いと残響がすぐ声へ重なる
Pre Delayが短いと、原音のすぐ後ろから残響が始まります。
声と空間がつながりやすい一方で、言葉の頭へすぐ残響が重なるため、輪郭が弱く感じることがあります。
少し遅らせると原音の頭を残しやすい
Pre Delayを少し長くすると、先にドライのボーカルが聞こえ、その後から残響が付いてきます。
原音と残響の間に時間差ができるので、空間を残しながら、言葉の頭や声の存在感を前に残しやすくなります。
残響は欲しいのに声だけが引っ込む時は、Wet量を大きく減らす前にPre Delayを動かす余地があります。
長くしすぎると残響が別の音に聞こえることがある
Pre Delayを長くすれば、原音と残響はよりはっきり分かれます。
ただ、長くしすぎると、自然な空間というより、声の後ろに別の反射音や短いディレイが付いているように聞こえることがあります。
原音を前に残せれば十分なので、分離を大きくすること自体を目的にはしません。
Decayが長すぎると次の言葉まで残響が残る
Decayは、リバーブの残響がどのくらい続くかに関わります。
Decayを長くすると余韻が長くなりますが、ボーカルでは前の言葉の残響が次の言葉へ重なりやすくなります。
残響時間が長いほど声の後ろに音が残る
一つの言葉が終わってもリバーブが長く続けば、その残響が残ったまま次の言葉が始まります。
これが続くと、ボーカルの後ろに残響が重なり続け、ドライ音の輪郭が見えにくくなることがあります。
テンポや歌の密度で必要な長さは変わる
ゆっくりした曲で言葉の間が広い場合と、速い曲で細かく歌い続ける場合では、同じDecayでも残響の重なり方は変わります。
歌の隙間で自然に残響が引いているのか、それとも次の言葉まで大きく残っているのかを聴くと、必要な長さを決めやすくなります。
長いリバーブほど豊かになるとは限らない
Decayを長くすると、残響そのものは分かりやすくなります。
ただ、言葉が続くボーカルでは、長くするほど豊かになるのではなく、残響同士が重なって声がぼやけることもあります。
長い余韻を聞かせたいのか、ボーカルを自然にオケへつなぎたいのかで、必要なDecayは変わります。
リバーブの高域が少ないと奥に感じることがある
リバーブの距離感は、残響の量と長さだけでは決まりません。
残響の明るさでも、声の前後感は変わります。
暗い残響は奥に感じやすい
高域が減った暗い残響は、明るく輪郭のある残響より後ろに引いた印象になることがあります。
ドライのボーカルが明るくても、その周囲に暗い残響が多く付けば、全体として奥行きが大きく感じられることがあります。
明るすぎるとリバーブ自体が目立つ
反対に、残響の高域が強すぎると、サ行や子音に付いたリバーブまで耳に入りやすくなります。
ボーカルを前へ残したいからとリバーブまで明るくしすぎると、空間が自然につながるより、残響そのものが目立つことがあります。
EQはドライ音とReturn側を分けて考える
リバーブを入れた時だけ距離感や音色が大きく変わるなら、ボーカル本体のEQを触る前にReturn側を見ます。
ドライ音の明るさはそのままに、残響だけ暗くしたり、反対に暗くなりすぎた部分を少し戻したりできます。
声本体と残響を別々に扱えるのは、Sendでリバーブを使う利点の一つです。
リバーブの低域・低中域が多いと輪郭が曇る
ボーカルが遠くなったように感じる時は、残響の低域や低中域も見ます。
このあたりが多いと、ボーカル本体は問題なくても、その周囲に濁りが増え、声の輪郭が見えにくくなることがあります。
残響側へ低域が溜まる
ボーカルからリバーブへ送った信号には、元の声に含まれる低域や低中域も入っています。
ドライ音では必要な厚みでも、残響として後ろに残り続けると、曲の中では濁りとして聞こえることがあります。
声本体を削る前にReturn側を見る
リバーブを入れる前は問題なかったのに、入れた後だけ曇るなら、ドライのボーカルを削る前にReturn側を確認します。
残響側の不要な低域や低中域だけを整理できれば、ボーカル本体の厚みはそのまま残せます。
不要な低域を整理すると前後を分けやすくなる
残響の下側が整理されると、リバーブの量を大きく減らさなくても、ドライの声とその後ろの空間を聞き分けやすくなることがあります。
単純にリバーブが多いのか、残響の低域が重なって輪郭が曇っているのか。この二つは分けて見ます。
リバーブの種類でも距離感は変わる
Room、Plate、Hallなど、リバーブの種類によって、反射の出方や残響の密度、広がり方は変わります。
ただ、種類だけでボーカルの位置が決まるわけではありません。同じタイプでも設定を変えれば、前後感は大きく変わります。
Roomは短い空間を作る時にも使える
Room系では、比較的短い反射を使って、ボーカルの周囲に部屋の存在を足せます。
長いリバーブテールを大きく残さずに空間感を出せますが、反射が強ければ、それ自体が目立つこともあります。
Plateも設定次第で前後感は変わる
Plateはボーカルでよく使われますが、Plateを選べば声が必ず前に残るわけではありません。
Pre Delayが短く、Decayが長く、残響量も多ければ、Plateでもボーカルは奥へ下がって聞こえます。
反対に、ドライ音を残しながら薄く使えば、声の存在感を大きく崩さずに残響を足せます。
Hallは広い空間や長い余韻を作りやすい
Hall系は、広い空間や長い残響を作る時に使われます。
Decayを長くし、残響量も増やせば大きな奥行きを出せますが、その分メインボーカルの輪郭も後ろへ下がりやすくなります。
Room、Plate、Hallという名前だけで決めず、Pre Delay、Decay、残響量、反射の出方まで含めて距離を決めます。
Early Reflectionsでも距離感は変わる
リバーブPluginによっては、Early Reflectionsと、その後に続くリバーブテールを分けて調整できます。
Early Reflectionsは、原音の後に早い段階で返ってくる初期反射です。
初期反射は部屋や距離の印象に関わる
原音の後にどのくらいの時間差で、どんな反射が返ってくるかによって、声がいる空間の大きさや距離の印象は変わります。
長く続くリバーブテールだけではなく、最初の反射も前後感を作っている要素です。
長い残響を増やさずに空間を足す方法もある
長いリバーブテールを大きく増やさなくても、短い反射を加えることで、ドライすぎるボーカルへ空間感を足せることがあります。
声の輪郭を残したい時は、Decayを伸ばし続けるより、Early Reflectionsとのバランスを見た方が合うこともあります。
Pluginによって調整できる範囲は違う
すべてのリバーブPluginでEarly Reflectionsを独立して細かく調整できるわけではありません。
独立した項目がなくても、Room SizeやPre Delay、リバーブタイプを変えると、最初の反射の聞こえ方が変わるPluginもあります。
リバーブを増やす前にボーカルの音量を見る
ボーカルがオケから浮いて聞こえると、リバーブを増やして奥へ送ろうとしやすくなります。
ただ、声が単純に大きすぎて前へ出ているだけなら、リバーブを増やす前にフェーダーを動かした方が直接的です。
声が大きすぎるから浮いている場合もある
ドライに聞こえることと、ボーカルの音量が大きすぎることは別です。
フェーダーバランスが原因なら、リバーブを増やしても、大きく聞こえるボーカルの後ろに残響が増えるだけになることがあります。
音量を少し下げるだけで馴染むことがある
フェーダーを少し下げただけでオケとの一体感が出るなら、先に空間を増やす必要はありません。
その位置でもまだボーカルだけ乾いて聞こえるなら、そこからリバーブを足していきます。
浮きと遠さを同じ処理で直さない
浮いているボーカルへリバーブを足せば、一時的にオケへ馴染んだように聞こえることがあります。
ただ、原因が音量だった場合は、そのまま残響を増やすと、今度は声そのものが遠すぎる位置まで下がります。
音量の問題はフェーダー、空間の問題はリバーブと分けた方が、ボーカルの位置を崩さずに済みます。
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ボーカルを前に残したままリバーブをかける考え方
リバーブを使っても、メインボーカルまで大きく奥へ下げる必要はありません。
ドライ音の輪郭を前に残し、その後ろへ必要な分だけ残響を置けば、存在感と空間の両方を残せます。
最初にドライ音を成立させる
まずリバーブを切った状態で、ボーカルの音量と音色をオケの中で決めます。
そこで声の位置が決まっていれば、その後はボーカルをリバーブの中から探すのではなく、すでにある声の後ろへ空間を足していけます。
Pre Delayで輪郭を先に出す
残響量は欲しいのに声が引っ込むなら、Pre Delayを少し長くして、ドライ音が先に聞こえる時間を作ります。
原音と残響の間に少し時間差ができるだけでも、ボーカルの輪郭の残り方は変わります。
Decayを長くしすぎない
前の言葉の残響が次の言葉まで大きく残っているなら、Decayを少し短くします。
残響をなくすのではなく、歌の隙間でどのくらい残ってほしいのかを見ながら決めます。
Return側の低域を整理する
リバーブの低域や低中域が重なっているなら、Return側をEQして必要のない部分を整理します。
ドライ音の厚みを削らなくても、残響側だけを軽くできるので、声と空間の境目を残しやすくなります。
必要なら高域の残り方も調整する
残響が暗すぎてボーカル全体まで奥へ感じるなら、高域の減衰やReturn側のEQも確認します。
反対に、高域が強すぎて残響そのものが目立つなら、少し落ち着かせます。
リバーブを明るくすれば前に出る、と決めるのではなく、ドライ音とオケの間で残響がどこに聞こえるかを見ます。
ボーカルリバーブの基本的な合わせ方
ボーカルが遠くなりすぎないようにリバーブを合わせる時は、量だけを上下するより、原音と残響の関係を一つずつ見た方が原因を追いやすいです。
僕は、だいたい次の順番で確認しています。
- リバーブを切った状態でボーカルの音量を決める
- Send量またはWet量を少しずつ上げる
- Pre Delayで原音と残響の重なり方を見る
- Decayを調整し、次の言葉まで残響が残りすぎていないかを見る
- Return側の低域や低中域が濁っていないか確認する
- 必要なら残響の高域の残り方を調整する
- Early Reflectionsを調整できる場合は、最初の反射の出方を見る
- リバーブを切った時と比べて、ボーカルが奥へ下がりすぎていないか確認する
- 最後にオケの中でボーカルと残響の距離を決める
残響量が多いならSend量やWet量を戻します。原音へすぐ残響が重なるならPre Delay、残響が長く残りすぎるならDecay、曇って聞こえるならReturn側のEQを見ます。
リバーブを減らすだけでは、欲しかった空間までなくなることがあります。どの要素が声を後ろへ動かしているのかを分けていけば、ボーカルの輪郭を前に残したまま、必要な奥行きを作れます。
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