ボーカルコンプは、声の大きい部分を抑えながら、曲の中でボーカルの位置を安定させるために使います。
ただ、Threshold、Ratio、Attack、Releaseを並べて見ても、最初はどこから触ればいいのか分かりにくいです。
「Ratioは4:1」「Attackは何ms」と数値を先に決めるより、それぞれを動かした時に声のどこが変わるのかを聴いた方が、コンプの役割は分かりやすくなります。
ボーカルの音量差を全部なくすのではなく、大きく飛び出す部分を整えながら、歌の抑揚や言葉の頭をどこまで残すかを決める。僕はここを基準にしています。
目次
ボーカルコンプは音量差を全部なくすためではない
コンプレッサーを強くかければ、ボーカルの音量差は小さくできます。
ただ、大きい部分も小さい部分も強く揃えていくと、聞きやすくなる代わりに、歌にあった強弱まで小さくなっていきます。
大きく飛び出す部分を整える
まず分かりやすいのは、急に大きくなる言葉やフレーズを抑える使い方です。
フェーダーを下げればボーカルトラック全体が小さくなりますが、コンプならThresholdを超えた部分を中心に抑えられます。
飛び出していた部分が落ち着くだけでも、オケの中でボーカル全体をどの音量に置くか決めやすくなります。
小さい部分まで全部コンプで持ち上げない
コンプでピークを抑えてから全体の音量を戻すと、それまで小さかった部分も相対的に聞こえやすくなります。
ただ、語尾だけ極端に小さい、Aメロとサビで必要な音量が違う、といった差まで全部コンプで揃えようとすると、他の部分まで深く圧縮することになります。
コンプで声全体の大きな動きを整え、それでも残る差はオートメーションへ分けた方が自然なこともあります。
ボーカルの音量差を整える方法はこちら👇
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歌の抑揚は残す
ボーカルは、言葉やフレーズごとの強弱も含めて歌になっています。
音量差があること自体が悪いわけではありません。
コンプをかけた後は、聞きやすくなったかだけでなく、元の歌にあった勢いや抑揚まで消えていないかも聴きます。
まずThresholdでどこから圧縮するか決める
Thresholdを設定できる一般的なコンプでは、入力信号のどのレベルから圧縮を始めるかを決めます。
一般的なコンプでは、Thresholdを下げるほど多くの部分が圧縮の対象になります。
Thresholdを下げるほどコンプが動く範囲は広がる
Thresholdが高ければ、大きく飛び出した部分だけにコンプが反応しやすくなります。
反対にThresholdを下げていくと、それまで通っていた小さなフレーズでも圧縮が始まり、コンプが動いている時間も長くなります。
ピークだけを抑えたいのか、ボーカル全体の動きをもう少し滑らかにしたいのかで、Thresholdの位置は変わります。
大きいところだけ抑えるのか、全体へかけるのかで変わる
一部の大きな言葉だけが飛び出すなら、そこへ反応する程度でも十分なことがあります。
ボーカル全体の動きを少し整えたいなら、それより広い範囲でコンプが反応する設定も使えます。
Thresholdの表示値そのものより、実際にどの言葉からゲインリダクションが始まっているかを見る方が、今の設定が何をしているのか分かりやすいです。
ゲインリダクションだけを目標にしない
多くのコンプには、何dB圧縮しているかを表示するゲインリダクションメーターがあります。
目安としては便利ですが、「必ず何dB下げる」と先に決める必要はありません。
声の飛び出し方や動きが狙った状態になった結果として、どのくらいゲインリダクションしているのかを見る方が自然です。
Ratioはどれくらい圧縮するかを決める
Ratioは、Thresholdを超えた信号をどの程度圧縮するかを決めます。
同じThresholdでも、Ratioが低い時と高い時では、飛び出した音の抑え方が変わります。
低いRatioなら動きを残しやすい
Ratioが低ければ、Thresholdを超えた部分も比較的穏やかに圧縮されます。
ボーカル全体の動きを軽く整えたい時は、こうした弱めの圧縮だけで十分なこともあります。
高いRatioほど強く抑えやすい
Ratioを高くすると、Thresholdを超えた部分のレベル変化をより強く抑えられます。
大きなピークをしっかり抑えたい時には使えますが、深く反応させれば歌の動きまで小さくなることがあります。
Ratioだけでコンプの強さは決まらない
Ratioが高くても、信号がThresholdをほとんど超えなければコンプはあまり動きません。
反対にRatioが低くても、Thresholdを下げて長い時間圧縮すれば、ボーカル全体への影響は大きくなります。
Ratioだけを見て強い・弱いと決めず、Thresholdと実際のゲインリダクションを一緒に見ます。
Attackで言葉の立ち上がりをどこまで残すか決める
Attackは、信号がThresholdを超えた後に、コンプが圧縮へ移る速さを決めます。
ボーカルでは、この設定で言葉の頭や声の輪郭がかなり変わります。
速すぎると声の頭まで押さえやすい
Attackを速くすると、言葉が立ち上がった直後から圧縮がかかりやすくなります。
ピークを捕まえやすい一方で、速くしすぎると子音や言葉の頭まで抑えられ、声の輪郭が弱く感じることがあります。
コンプを入れてからボーカルが丸くなった時は、EQで高域を足す前にAttackも戻してみます。
遅すぎるとピークがそのまま飛び出すことがある
Attackを遅くすると、最初の立ち上がりを通してから圧縮がかかります。
言葉の頭を残しやすくなりますが、遅すぎれば抑えたかったピークまで大きく通ることがあります。
輪郭は残したいけれど、大きく飛び出す部分は抑えたい。その間を探すのがAttackの調整です。
前に出したい時と丸めたい時で変わる
言葉の頭をある程度残すと、声の輪郭が見えやすくなります。
反対に立ち上がりを早めに抑えると、ピークが丸まり、滑らかに聞こえることがあります。
Attackはピークを捕まえるためだけではなく、ボーカルの輪郭をどの程度残すかにも関わります。
Releaseでコンプが戻る速さを決める
Releaseは、圧縮がかかった後に、ゲインリダクションが元へ戻っていく速さを決めます。
ここが歌の動きに合っていないと、圧縮量そのものは大きくなくても、不自然な揺れや押さえ込みとして聞こえることがあります。
短すぎると音量が揺れて聞こえることがある
Releaseが短いと、コンプは圧縮した後すぐに戻ります。
戻りが速すぎると、フレーズの途中でゲインリダクションが大きく行き来し、音量が細かく揺れて聞こえることがあります。
長すぎると次の言葉まで圧縮が残ることがある
Releaseを長くすると、圧縮された状態からゆっくり戻ります。
滑らかに聞こえる一方で、前の大きな言葉でかかったゲインリダクションが次の言葉まで残り、そこまで一緒に押さえてしまうことがあります。
歌のフレーズに合わせて戻り方を見る
Releaseは数字だけで決めるより、声とゲインリダクションメーターの両方を見ると分かりやすいです。
一つの言葉を抑えた後、次の言葉へ入るまでにどのくらい戻っているのか。歌の流れに対して不自然な上下が出ない位置を探します。
ゲインリダクションは何dBくらいが目安?
ボーカルコンプでは、何dBくらいゲインリダクションさせればいいのかも迷いやすいところです。
軽く整えるところから始めるなら、まず数dB程度のゲインリダクションで何が変わるかを確認すると分かりやすいです。
まず2〜6dB程度から確認する
ボーカルでは、ピーク時に2〜6dB程度ゲインリダクションするところから確認する使い方もよくあります。
もちろん、この範囲が正解という意味ではありません。2dB程度で十分にまとまる声もあれば、もっと深くかけた方が狙った音になることもあります。
最初から大きく圧縮するより、変化を追えるところから始めた方が、何をした結果なのかは分かりやすくなります。
大きく潰す処理もあるが目的が違う
ボーカルでは、かなり深くコンプをかける音作りもあります。
ただ、その場合は音量差を整えるだけではなく、声の密度や質感を積極的に変える目的まで入ってきます。
まず自然にダイナミクスを整えたいなら、圧縮量そのものを目的にせず、必要なところまで少しずつ動かした方が判断しやすいです。
数字よりバイパス前後の声を聴く
ゲインリダクションが4dBだから良い、8dBだからかけすぎ、と数字だけでは決まりません。
同じ4dBでも、Ratio、Attack、Releaseやコンプ自体の動作によって聞こえ方は変わります。
メーターは目安として使いながら、コンプを外した時と比べて、声の飛び出し方や抑揚がどう変わったかを聴きます。
メイクアップゲインは圧縮後の音量を戻すために使う
コンプでピークを抑えると、その分だけ出力レベルも下がります。
必要ならメイクアップゲインを使い、圧縮後のボーカルをミックスの中で必要な音量まで戻します。
大きくなっただけで良くなったと判断しない
音は大きくなるだけでも、存在感が増して良くなったように感じいやすいです。
メイクアップゲインを大きく上げた状態でバイパスと比べると、コンプによる変化より音量差を聴いてしまいます。
バイパス前後の音量を近づけて比べる
コンプをかけた状態と外した状態の音量をある程度近づけると、圧縮そのものによって何が変わったのかを判断しやすくなります。
ピークが落ち着いたのか、輪郭が弱くなったのか、密度感が変わったのか。音量以外の差をここで聴きます。
ボーカルコンプを強くかけすぎた時に起きること
コンプを深くかければ、ボーカルの音量差はかなり小さくできます。
その代わり、設定によっては歌の表情や声の輪郭まで変わります。
声の抑揚がなくなる
大きい部分を深く抑え続けると、歌の強弱まで小さくなります。
音量は安定したのに、歌の動きまで平坦に感じるなら、圧縮量を戻した方がいい場合があります。
言葉の頭が弱くなる
速いAttackで深く圧縮すると、言葉の立ち上がりまで強く抑えられることがあります。
コンプを入れてからボーカルが丸くなったり、輪郭が引っ込んだりした時は、ThresholdやRatioだけでなくAttackも見直します。
ブレスや歯擦音が目立つことがある
ピークを抑えてから全体のレベルを戻すと、それまで小さかったブレスや歯擦音が相対的に聞こえやすくなることがあります。
コンプ後に急にサ行や息遣いが気になり始めた時は、そこだけ別の問題が発生したと考える前に、圧縮前との違いも確認します。
常に前へ張り付いたように聞こえることがある
ダイナミクスを強く揃え、さらに出力レベルを上げると、ボーカルが曲の展開に関係なく一定の強さで前に残ることがあります。
オケには強弱があるのに声だけ同じ密度で聞こえるなら、コンプが馴染ませる方向ではなく、声だけを前へ固定する方向に動いていないかを見ます。
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コンプをかけても音量差が揃わない部分は残る
コンプをきれいに設定しても、ボーカルのすべての音量差が自然に揃うとは限りません。
残った差までコンプで追い込むより、別の処理へ分けた方が自然な場面があります。
語尾だけ小さい場合
一つの語尾だけ極端に小さい場合、それを聞こえるようにするためにコンプ全体を深くすると、他の言葉まで強く圧縮されます。
こうした部分は、その言葉だけオートメーションで少し上げた方が素直に直せることがあります。
Aメロとサビで必要な音量が違う場合
Aメロではちょうどよくても、サビで楽器が増えるとボーカルが埋もれることがあります。
これはボーカル自身のダイナミクスだけではなく、周囲の音量や密度が変わった結果でもあります。
サビ全体だけ少し上げたいなら、コンプを深くするよりフェーダーオートメーションの方が直接的です。
オートメーションと役割を分ける
コンプは、声そのもののダイナミクスを整えます。
オートメーションなら、曲の展開や言葉ごとに必要な場所だけ音量を動かせます。
この二つを分けると、コンプを必要以上に深くかけなくても、ボーカルの位置を曲の中で整えられます。
コンプだけでは揃わない音量をオートメーションで整える考え方はこちら👇
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ボーカルオートメーションはなぜ必要?コンプだけでは揃わない理由 | DTM DRIVER!
ボーカルオートメーションが必要な理由を、コンプとの違い、語尾や単語の調整、クリップゲインとの使い分け、セクションごとの音量変化から整理します。
コンプは1台だけでなく2段に分ける方法もある
一つのコンプレッサーですべてを処理する必要はありません。
大きなピークと、ボーカル全体の動きを別々に整えたい時は、2台へ役割を分ける方法もあります。
1台で全部処理しない
大きなピークをしっかり抑えながら、同じコンプで全体のダイナミクスまで深く整えようとすると、一台へかなり大きな仕事をさせることになります。
それで狙った音になるなら問題ありませんが、圧縮感が強くなりすぎるなら、役割を分ける方法があります。
1段目でピーク、2段目で全体を整える考え方
例えば、1台目で急に飛び出す部分を軽く抑え、2台目で残った全体の動きを穏やかに整える使い方があります。
それぞれの圧縮量を小さくしながら、違う役割を持たせられます。
2台使えば必ず良くなるわけではない
一台で十分にまとまるなら、無理にコンプを増やす必要はありません。
2段コンプはPluginの数を増やすことが目的ではなく、一台へ無理な設定をさせず、必要なら仕事を分けるための方法です。
ボーカルコンプの基本的な合わせ方
ボーカルコンプは、設定値を先に覚えるより、各パラメータを動かした時に何が変わったのかを追いながら合わせる方が分かりやすいです。
基本的には、次のような流れで調整できます。
- フェーダーでボーカルの大まかな音量を決める
- Thresholdを動かして、どの部分からコンプを反応させるか決める
- RatioでThresholdを超えた部分をどの程度抑えるか決める
- Attackで言葉の頭をどこまで残すかを見る
- Releaseでフレーズに対してどう戻るかを見る
- 必要に応じてThresholdを再調整し、圧縮量を詰める
- メイクアップゲインで圧縮後の音量を合わせる
- バイパス前後の音量を近づけて、声の変化を確認する
- コンプで自然に揃わない部分はオートメーションへ分ける
Threshold、Ratio、Attack、Releaseには、それぞれ別の役割があります。
Thresholdでどこから動かすのか、Ratioでどの程度抑えるのか、Attackで何を残すのか、Releaseでどう戻すのか。この関係が分かると、固定された設定値を探さなくても、自分のボーカルに合わせて動かせるようになります。
コンプだけでボーカルを完成させる必要もありません。大きなダイナミクスをコンプで整え、曲の中で残った音量差はオートメーションへ分ける。そのくらいに役割を分けた方が、歌の抑揚を残したままオケの中へ置きやすくなります。
ボーカルミックス全体の流れと基本はこちら👇
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