ミックスのモニター音量は、「何dBなら正解」という一つの数字だけで決めるものではありません。
音量を変えると低域、高域、音の細部の感じ方まで変わるため、普段の判断に使う基準音量を決め、その上で小音量や短時間の大きめの音量でも確認します。
大きな音で良く聴こえた状態をそのまま正解にせず、耳が疲れる前の状態で判断を続けられることを優先します。
目次
ミックスのモニター音量はどれくらいがいい?
ミックスでは、長時間聴いても耳への負担が大きくならず、音量、帯域、前後感を判断できる音量を基準にします。
スタジオでは音圧レベルを測って基準を作る方法もありますが、自宅の小さな部屋まで同じ数値へ合わせる必要はありません。
まず普段の判断に使う音量を一つ決め、ミックス中に頻繁に上げ下げしない状態を作ります。
大きすぎる音量でミックスすると何が起きる?
音量を上げると、同じミックスでも迫力が増し、細かい音まで聞こえやすくなります。
そのため、処理によって良くなったのか、単に大きな音で聴いているから良く感じているのかを分けにくくなります。
低域や高域の感じ方が変わる
人間の耳は、再生音量によって周波数ごとの感じ方が変わります。
小さい音量では低域や高域を中域より相対的に弱く感じ、音量を上げるとその差は小さくなります。
そのため、大きな音で決めたEQバランスを小音量へ戻すと、想像していたバランスと違って聴こえることがあります。
音が良くなったように感じやすい
プラグインを挿した後に音量まで上がると、処理の内容とは別に、大きくなったこと自体で良く感じることがあります。
EQ、コンプ、サチュレーションなどを比較する時は、処理前後の音量差をできるだけ小さくして聴きます。
レベルを近づけた状態でも必要な変化が残っているかを確認します。
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耳が疲れると判断が変わる
大きな音を長く聴き続けると、耳が疲れて音の感じ方が変わります。
高域が足りないように感じて足すこともあれば、刺激が強く感じて削りすぎることもあります。
音量を上げないと判断できなくなってきたら、そのまま処理を増やさず、一度耳を休ませます。
小さすぎる音量にも限界がある
小音量での確認は有効ですが、小さい音だけでミックスを完成させる必要はありません。
音量を下げるほど聞こえにくくなる帯域や細部もあるため、何を確認するための音量なのかを分けます。
低域と高域を判断しにくくなる
小音量では、低域や高域を中域より弱く感じます。
その状態だけを基準にすると、ベースを必要以上に上げる、高域を足しすぎるといった判断につながることがあります。
低域や高域の量を細かく決める時は、普段使っている基準音量へ戻して確認します。
細かいノイズや残響を確認しにくい
小さなノイズ、リバーブの後半、ディレイの細かい反復などは、音量を下げすぎると聞き取りにくくなります。
こうした細部を確認する時は、基準音量へ戻して聴きます。
小音量だけで仕上げない
小音量では主役の残り方や全体の重心を確認し、細かな帯域や空間を決める時は基準音量へ戻します。
一つの音量ですべてを判断せず、確認する内容によって音量を切り替えます。
85dB SPLは絶対ではない
ミックスのモニター音量として85dB SPL前後という数字を見かけることがあります。
これは基準として使われることのある音量ですが、すべての部屋や作業時間で85dB SPLへ固定する必要はありません。
一定の音圧を基準にする意味
毎回おおむね同じ音圧でモニターすると、再生音量そのものが変わったことでEQや音量バランスの判断まで動くのを減らせます。
スタジオや放送・映画などでは、測定した音圧を基準にしてモニター条件をそろえる方法があります。
小さな部屋で85dB SPLへ合わせる必要はない
自宅の小さな部屋やスピーカーとの距離が近い環境では、同じ数字へ合わせなくてもミックスできます。
長時間作業するなら、耳へ負担を掛けずに判断を続けられる音量まで下げた方が実用的です。
大きなスタジオで使われる基準値を、そのまま近距離のモニター環境へ持ち込む必要はありません。
数字より判断する条件をそろえる
同じミックスでも、前回より大きな音で聴けば低域や高域の感じ方まで変わります。
普段使うモニターコントローラーやインターフェースの位置を決めておくと、前回との比較条件をそろえられます。
数値そのものより、同じ条件へ戻せることを優先します。
小音量では全体の重心を見る
小音量では、細かな音色より、ミックスの中で最後まで残る音を確認します。
特にボーカルや主旋律などの主役と、曲全体の音量バランスを見る時に使えます。
ボーカルや主役が残っているか
音量をかなり下げた時に、ボーカルや主旋律だけが急に埋もれるなら、周囲の音との音量関係を確認します。
反対に主役だけが突出して残るなら、基準音量へ戻した時のバランスも確認します。
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キックとベースは低域の細部ではなく全体との関係を見る
小音量では低域そのものを細かく評価しにくくなります。
そのため、キックやベースの深さや音色を決めるのではなく、曲全体に対して低域が強すぎないか、主役を押し込んでいないかを見るために使います。
小音量で消える音を全部持ち上げない
大きな音では聞こえていた楽器が、小さくするとほとんど聞こえなくなることがあります。
その音が曲の中で重要なら、フェーダー、帯域、タイミング、定位のどこで埋もれているかを確認します。
ただし、背景に置いた小さな音まで小音量で明確に聞こえる必要はありません。音量を下げても残すべき音と、背景へ沈んでよい音を分けます。
音量を変えると同じミックスでも聴こえ方が変わる
モニター音量を変えた時に低域や高域の感じ方が変わるのは、スピーカーだけの問題ではありません。
人間の聴覚そのものが、音圧によって周波数ごとの感度を変えます。
等ラウドネス曲線で聴こえ方が変わる
人間の耳は、すべての周波数を同じ感度で聞いているわけではありません。
その周波数ごとの感度差も、音圧によって変わります。
そのため、モニター音量を大きく変えたままEQを続けると、同じ音でも判断する条件が変わります。
音量を変えると低域と高域の感じ方も変わる
小音量から音量を上げると、中域に対する低域と高域の聴こえ方が変わります。
大きな音で低域が十分に感じられたからといって、そのバランスが別の音量でも同じように聞こえるわけではありません。
EQを比較する時は音量差を減らす
EQを入れた後に出力レベルまで上がると、周波数バランスの変化と音量差が一緒に聞こえます。
処理前後を比較する時は、できるだけ近い音量へ合わせます。
そこで必要な変化が残っているかを聴きます。
ミックス中は基準音量を一つ決める
ミックス中に音量を何度も変えると、フェーダーやEQの判断基準まで動きます。
普段の作業では一つの基準音量を中心にして、別の音量は確認用として使います。
普段の判断は同じ音量へ戻す
フェーダー、EQ、コンプ、空間系などの基本判断は、長く聴いても無理のない基準音量で進めます。
別の音量で確認した後も、この基準へ戻せば同じ条件で続きを判断できます。
大きめの音量は短時間だけ使う
一瞬のインパクトや低域の動きを別の音量でも確認したい時は、短時間だけ上げます。
そこで迫力が出たこと自体をミックス改善と判断せず、確認が終わったら基準音量へ戻します。
途中で小音量へ落として全体を見る
作業の途中で音量を下げると、細部から離れて、主役と伴奏の大きさを確認できます。
そこで全体の重心を確認したら、また基準音量へ戻して帯域や空間を調整します。
処理後に音量が上がると判断を誤りやすい
ミックスでは、処理後の音が少し大きくなっただけでも、処理前より良く感じることがあります。
その差をそのままプラグインの効果だと思うと、必要以上に処理を重ねる原因になります。
処理前後は近い音量で比較する
プラグインをバイパスした時に音量が大きく変わるなら、入力や出力ゲインを調整して近い音量へ合わせます。
その状態で、音色、ダイナミクス、前後感、輪郭がどう変わったかを聴きます。
コンプ・EQ・サチュレーションのレベル差を分ける
コンプ後のメイクアップゲイン、EQのブースト、サチュレーションの出力などで音量が上がれば、処理そのものとの違いを判断しにくくなります。
比較する時は出力差を減らし、その処理で本当に必要な変化が出ているかを確認します。
メーターはレベル差を見るために使う
メーターを使えば、処理前後のピークやラウドネスの変化を確認できます。
ただし、数値が近いからといって、音の硬さ、奥行き、前後感、まとまりまで同じ条件になったわけではありません。
メーターは大きなレベル差を切り分けるために使い、その状態でどちらの音が成立しているかは実際に聴いて判断します。
ヘッドホンはスピーカーと同じ感覚で音量を決めない
ヘッドホンは耳のすぐ近くで鳴るため、スピーカーと同じボリューム位置や感覚では音量を比較できません。
機種ごとの感度やインピーダンス、ヘッドホンアンプの出力によっても、同じボリューム位置で耳へ届く音量は変わります。
ボリューム位置だけでは実際の音量は分からない
インターフェースのヘッドホンノブが同じ位置でも、使うヘッドホンが変われば耳へ届く音量は変わります。
ノブの位置を他の機種との共通基準にせず、そのヘッドホンで無理なく判断できる音量へ合わせます。
長時間の大音量を避ける
ヘッドホンではスピーカーのように部屋へ音が広がらないため、実際の耳元の音量を感覚だけで把握しにくいことがあります。
長時間使う時ほど、必要以上に大きな音へしないことを優先します。
スピーカーとヘッドホンで役割を分ける
スピーカーでは部屋を含めた左右の定位や空間を確認でき、ヘッドホンでは小さなノイズや左右の細部を確認しやすくなります。
どちらかだけを絶対基準にせず、同じミックスが別の再生方法でどう変わるかを確認します。
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耳が疲れた状態で細部を追い込まない
長く作業していると、同じ音量でも最初と同じようには聴こえなくなります。
その状態で細かなEQや高域を追い込むと、休憩後に聴いた時に処理しすぎていることがあります。
高域の判断は一方向にずれるとは限らない
耳が疲れた時の変化は一方向ではありません。
刺激が強く感じて高域を削り続けることもあれば、逆に足りないと感じて高域を足すこともあります。
同じ場所を何度も触り始めたら、そこでさらに追い込むより一度止めます。
休憩後に判断が変わるなら前の処理へ戻る
耳を休ませた後に聴いて、直前のEQやコンプが強すぎると感じたなら、その処理を戻して比較します。
長時間聴き続けた最後の判断だけを正解にしません。
モニター音量を確認する順番
ミックス中は、一つの音量ですべてを判断せず、それぞれの役割を分けます。
基準音量
普段のフェーダー、EQ、コンプ、空間系の判断は、長く聴いても無理のない基準音量で進めます。
小音量
音量を下げ、ボーカルや主旋律が残るか、曲全体の重心が崩れていないかを確認します。
短時間の大きめの音量
必要な時だけ音量を上げ、別の音圧でも低域やインパクトがどう感じられるかを確認します。
確認が終わったら基準音量へ戻します。
別スピーカー・ヘッドホン
再生環境を変え、特定のモニターや音量でしか成立していないバランスがないかを確認します。
休憩後の再確認
細かな判断を重ねた後は、一度耳を休ませてから同じ基準音量で聴き直します。
そこで大きく印象が変わるなら、最後に加えた処理まで戻って確認します。
モニター音量は固定値より判断がぶれないことを優先する
モニター音量は、大きければ細部が分かる、小さければ正確という単純なものではありません。
普段の判断に使う音量を一つ決め、小音量では全体の重心、大きめの音量では別の音圧でどう変わるかを短時間確認します。
85dB SPLなどの数字は基準を作るためには使えますが、その数字自体が良いミックスを作るわけではありません。同じ条件へ戻せる状態を作り、最後は実際の音がどう成立しているかで判断します。
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