周波数マスキングは、複数の音が近い帯域で重なった時に、片方の音が聞き取りにくくなる状態です。
帯域が重なっているだけなら問題ではありません。実際に重ねた時に、必要な音の輪郭や存在感が失われているかで判断します。
音量、帯域、タイミング、定位のどこで競合しているかを分けると、EQを増やさなくても解決できることがあります。
目次
周波数マスキングとは?
二つ以上の音が近い周波数帯域で同時に鳴ると、一方の音によって、もう一方が聞き取りにくくなることがあります。
例えばボーカルとギターが同じ中域を強く使っていれば、どちらも単体では問題なくても、重ねた時にボーカルの言葉が聞き取りにくくなります。
キックとベースでも、低域の同じ範囲へ強い成分が重なると、それぞれの輪郭が分かりにくくなることがあります。
マスキングが起きると何が起こる?
マスキングが起きても、トラック自体の音量が小さくなっているとは限りません。
レベルは十分あるのに、他の音と重なった時だけ存在感や輪郭が弱く感じられることがあります。
音量はあるのに存在感がなくなる
埋もれている音のフェーダーを上げても、うまく前へ出ないことがあります。
同じ帯域を使う別の音も強く鳴っているなら、片方の音量を上げても競合は残ります。
フェーダーを上げ続ける前に、何の音を足した時に聞き取りにくくなるのかを確認します。
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複数の音が一つの塊に聴こえる
ギター、鍵盤、ボーカルなどが同じ中域へ集まると、それぞれの輪郭が分かれず、一つの塊のように聴こえることがあります。
単体で音を整えても、全体へ戻した時にまた埋もれるなら、音同士の重なりまで戻って確認します。
音を足すほど全体が濁ることがある
一つずつでは問題なくても、似た帯域を持つ音が増えると、同じ範囲へ音が集中します。
その結果、特定のトラックだけでなく、ミックス全体の輪郭まで分かりにくくなることがあります。
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まず音量バランスを確認する
音が埋もれた時に、最初からEQを使う必要はありません。
片方の音が大きすぎるだけなら、フェーダーを動かした方が原因を早く切り分けられます。
大きすぎる音が他の音を隠していないか
例えばギターが大きすぎてボーカルが埋もれているなら、ボーカルへEQを足す前にギターの音量を下げて比較します。
フェーダーだけで必要な音が戻るなら、そこで止めます。
EQする前にフェーダーで解決できるか確認する
音量差で解決できるところへEQを重ねると、元の音色まで変わります。
レベルを整えても特定の帯域だけで埋もれるなら、そこからEQへ進みます。
同じ帯域に音が集中していないか確認する
フェーダーを整えても埋もれるなら、どの帯域で音同士が競合しているかを確認します。
重なり方は、楽器の組み合わせと音色によって変わります。
ボーカルとギター
ボーカルとギターは、中域から中高域で重なることがあります。
ギターを足した時に言葉が聞き取りにくくなるなら、ボーカルをさらに大きくする前に、ギター側のどの帯域が重なっているかを確認します。
反対にギターの輪郭が消えているなら、ボーカルを基準に一方的に削るのではなく、その場面でどちらを前へ出すかを決めます。
キックとベース
キックとベースは、低域で競合を確認することが多い組み合わせです。
両方が同じ低域を強く使い、同じ瞬間に鳴ると、キックとベースそれぞれの輪郭が分かりにくくなることがあります。
どちらへ低域の重心を置くかを決め、必要ならEQや音の長さまで調整します。
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スネアとギター・シンセ
スネアの胴鳴りやアタック周辺に、ギターやシンセが重なることもあります。
スネア単体では十分に聞こえるのに、オケへ戻すと輪郭が消えるなら、その瞬間に鳴っている中域の音を確認します。
高域の音が重なる場合
ハイハット、シンバル、アコースティックギター、シンセ、ボーカルの子音などが同時に高域へ集まることもあります。
この場合は、特定の音が埋もれるだけでなく、全体が騒がしく聴こえることがあります。
全部の高域を残すのではなく、その場面で何の輪郭を出したいかを基準に整理します。
EQでマスキングを整理する
音量を整えても特定の帯域で競合が残るなら、EQで差を作ります。
周波数が重ならない状態を作るのが目的ではありません。必要な音を聞き取れるだけの差があれば十分です。
両方を同じように削らない
二つの音が同じ帯域で重なっていても、両方を同じように削る必要はありません。
両方から同じ帯域を削れば、その部分だけ全体が薄くなることもあります。
どちらへその帯域を残すかを決めてから動かします。
主役に必要な帯域を残す
ボーカルを前へ出したい場面なら、言葉や存在感に必要な帯域をボーカル側へ残します。
同じ帯域でギターや鍵盤が強く重なっているなら、競合側を少し下げて全体へ戻します。
楽器が主役になる場面では、同じEQのまま固定せず、オートメーションやダイナミック処理で役割を変える方法もあります。
必要な範囲だけ削る
マスキングを避けるために、広い帯域を大きく削る必要はありません。
競合している場所が分かったら、その音に残す必要のない範囲を下げて全体へ戻します。
削った結果、その楽器の芯や質感までなくなるなら処理を戻します。
ブーストする前に競合している音を確認する
埋もれた音を出すために、そのトラックをブーストする方法もあります。
ただし、すでに混み合っている帯域をさらに上げると、全体の密度まで増えることがあります。
先に競合している別の音を少し下げ、その方が自然に分かれるかを比較します。
タイミングの重なりでもマスキングは変わる
同じ帯域を使っていても、鳴るタイミングがずれていれば、それぞれを聞き分けられることがあります。
反対に、同じ瞬間へ音が集中すると、その場所だけ急に埋もれることがあります。
同じ瞬間に鳴る音を確認する
曲全体では問題がなくても、サビの頭や強いアクセントだけ音が埋もれることがあります。
その瞬間に何が同時に鳴っているかを確認すると、EQではなく時間方向の重なりが原因だと分かる場合があります。
リリースやサステインを短くする
音が長く残れば、次の音と重なる時間も長くなります。
シンセやベースのサステイン、音源自体のリリース、リバーブの残響などが長すぎるなら、短くすることで重なる時間を減らせます。
帯域を削る前に、必要以上に音が残っていないかも確認します。
アレンジを変えた方が早い場合もある
同じ音域、同じタイミングで複数のパートが動いているなら、ミックス処理だけで分けるより、アレンジを変えた方が自然に分かれることがあります。
オクターブを変える、フレーズを減らす、鳴らすタイミングをずらす。それだけで競合が大きく減る場合があります。
パンで聞き分けやすくなる場合もある
同じ帯域を使う音でも、左右へ分けるとステレオ再生では位置の違いによって聞き分けやすくなることがあります。
EQだけで分離しようとせず、定位まで含めて考えます。
左右へ分けると位置の違いができる
似た帯域を使うギターや鍵盤を左右へ分ければ、同じ位置から鳴らす時より、それぞれの場所を認識しやすくなります。
ただし、パンを振っても周波数の重なり自体がなくなるわけではありません。
センターに残す音との役割を決める
ボーカル、キック、ベースなどをセンターへ置くなら、その周囲へ他の音を配置することで聞き分けやすくなる場合があります。
パンだけでは足りなければ、音量や帯域も合わせて調整します。
モノラルでも確認する
パンによって分かれていた音は、モノラルでは左右の定位差がなくなります。
モノラルへまとめた時に主要な音が急に埋もれるなら、定位だけで分離していないかを確認します。
ダイナミックEQやサイドチェインで必要な時だけ下げる
競合するのが曲中の一部だけなら、通常のEQで常に削る必要はありません。
ダイナミックEQやサイドチェインを使えば、重なる瞬間だけ競合する音を下げられます。
常時削ると音が薄くなる時に使う
競合する帯域を通常のEQで削ると、その音が単独で鳴る場所まで同じだけ変わります。
必要な瞬間だけ下げれば、競合していない場所では元の音色を残せます。
ボーカルが鳴る時だけ競合帯域を下げる
例えばボーカルとギターが特定の帯域でぶつかるなら、ボーカルをトリガーにして、ギター側のその帯域だけを下げる方法があります。
ボーカルが止まれば処理も戻るため、ギターの音色を常に削らずに済みます。
キックとベースの重なりを時間方向で整理する
キックとベースが同時に鳴る瞬間だけ互いの輪郭が分かりにくくなるなら、キックをトリガーにしてベース側を短く下げる方法があります。
フェーダーやEQで成立しているなら、サイドチェインまで使う必要はありません。
スペクトラムアナライザーだけで判断しない
スペクトラムアナライザーを見ると、複数の音がどの帯域へ集まっているかを確認できます。
ただし、スペクトラムが重なっているだけでは、マスキングが問題になっているとは判断できません。
周波数が重なっていても問題ない場合がある
多くの楽器は広い周波数帯域を持っているため、ミックスの中で帯域が重なること自体は普通です。
重なっていても必要な音を聞き取れるなら、無理に周波数の隙間を作る必要はありません。
実際に聞こえなくなっている音を探す
アナライザーは、競合している帯域を探す補助として使います。
何Hzが重なっているかだけを見るのではなく、どの音を足した時に何が聞き取りにくくなったかを全体の中で確認します。
マスキングを確認する順番
音が埋もれている時は、処理を増やす前に原因を順番に分けます。
フェーダー
まず、大きすぎる音が他の音を隠していないかを確認します。
全体で聴く
マスキングは音同士の重なりで起きるため、単体だけでは判断できません。
原因を探す時にソロを使っても、調整後は全体へ戻して確認します。
EQ
音量だけでは解決しない時に、どの帯域が競合しているかを確認します。
その帯域をどちらへ残すかを決め、必要な分だけ動かします。
タイミング
サステイン、音源自体のリリース、残響によって、必要以上に同じ時間へ音が重なっていないかを確認します。
パン
同じ位置から鳴っている音を左右へ分けた時に、ステレオで聞き分けやすくなるかを比較します。
ダイナミック処理
一部の場面だけ競合するなら、ダイナミックEQやサイドチェインで必要な瞬間だけ下げます。
アレンジ
同じ音域とタイミングへ音が集中しているなら、音域、フレーズ、鳴るタイミングを変えることで処理自体を減らせます。
周波数マスキングは必要な音が埋もれた時に整理する
周波数が重なっていること自体は問題ではありません。
音を重ねた結果として、必要なボーカル、キック、ベース、楽器の輪郭が聞き取りにくくなった時に、その組み合わせを確認します。
フェーダーで戻るならそこで止める。帯域が原因ならEQを使う。同時に鳴る瞬間だけ問題になるなら、ダイナミック処理や音の長さまで確認する。それでも音が詰まるなら、アレンジまで戻ります。
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